メナード美術館で開催されている、田渕俊夫さんの作品を卒業生と一緒に観て来た。田渕さんの作品を初めて観たのもメナード美術館だった。日本画の世界では、東山魁夷さんに次ぐ作家と言われていた。それにしてもメナード美術館は、どうして田渕さんの作品を多く所蔵しているのかと思っていた。
今日出かけて行って、田渕さんが愛知県芸大で助手を勤めていたことを知り、理解できた。助手時代の田渕さんの作品を観て、将来の大器と評価できる人がメナードにはいたのだろう。どんなにいい絵を描いていても、誰からも評価されなければ世に出ることは出来ない。
日本画は洋画と違って、技術力や装飾性が問われる。洋画は宗教画や肖像画から出発しているので、写真が生まれた近代からは、主張が絵の重要なテーマになった。ところが、日本画は家の中を飾ることが目的だったから、主張に走ることは無く、気持ちの良い空間を作りだす役割から変わることが無かった。
日本画はデザイン画である。手法もトレスを重ねるなど、デザインと同じだ。私は日本画に憧れたけれど、洋画の方が「絵で思いを伝えられる」、そう思っていた。田渕さんの作品の繊細な線を見ていたら、技術力と装飾性の日本画の良さが羨ましくなった。見る人を感心させる力が漲っていた。