雨の午後、ふたりの美人の訪問があった。ふたりとも背は170センチ近い長身で、スリムだから美人コンテストに出れば入賞は間違いないだろう。「チューリップ、見せてもらいに来ました」と言う。「先週が見頃」と伝えてあったのに、今日では間が悪かった。
「そんなに花の命は短いんですか」と落胆していたので、「まだ、少し残っているから、雨は降ってるけど見て来る?」と言うと、「いいですか」と言いながらルーフバルコニーへ出て行った。「風が強くなければもう少し見られたけど、風が強くて花が痛んでしまった」と言い訳する。
「まあ、花はどれも見頃は1週間くらいだね。あなたたちはいつまでもきれいだからいいじゃないの」とちょっとゴマをする。マスクをしているから素顔は分からないが、かなりの美人だろう。ふたりとも細いスパッツを穿いているが、きっときれいな足をしているはずだ。
若くて美しい女性を目の前にすることは久しくなかった。こんなに年老いても心が浮き立つから不思議だ。30分ほど居て帰って行ったが、次に来るのは来年だろうか。彼女たちは保険レディで、契約事項の確認に回っているのだから。
保険レディといえば、年増の女性が多いと思っていた。でも、彼女たちの話では、「契約もパソコンでする人が多くなり、訪問する仕事は減っていきそう」と心配していた。「子どもたちも、遊びに来てても、それぞれにスマホを操作しているから静かなのよ」と呆れていた。人と人が出会わない、そんな時代へ向かっている。