NHKテレビの朝のドラマが新しくなった。この前ドラマ『あさが来た』が好評だっただけに、見る人を引き付けるのは大変だろう。まだ、太平洋戦争に突入する前の昭和の初め頃だ。ヒロインの父親は、この時代にこんな人がいたのだろうかと思うほど「民主的」だ。1)子どもたちと月に一度は必ず出かける 2)朝食は家族揃って食べる 3)自分の服は自分でたたむ。この3つが家訓だという。
私の父は明治末の生まれだから、ドラマの父親と同じくらいの歳だろう。姉は「とても厳しい人で、礼儀や学習に特にうるさかった」と言う。ところが私や妹は、父から叱られたり指示されたことがない。月に一度ではなかったが、年に二・三度は家族一緒に遠くへ出かけた。時々、お土産を買って来て家族でいただいた。教師だった父は戦前の教育への反省から、「民主的」な父親像を求めたのかも知れない。
ドラマの父親と同様に、威張ったりすることはなかった。ただ、いつも本を読んでいる姿が目に残っている。感情的になることはなかったが、一度だけ祖父に凄い剣幕で言い返した。それが何だったのか覚えていないが、父が怒る姿を見たのはその時だけだった。父の怒りの原因は、自分のことでは腹を立てる人ではなかったから、祖父が私たち子どものことか、妻である母のことで何かを言ったのではないかと思う。
父は医者になって小説を書くのが夢だったと姉は言う。けれど、医者にはなれず教師になった。それを支えたのが母だったので、父にとって母は頭の上がらない存在だったと思う。母は陽気な女性で、蛍光灯にホコリのようなものを見つけて、「ウドンゲの花が咲いたわよ。きっと素敵なことが起きる」と子どものようにはしゃいで父に見せていた。父は否定せずに眺めていたが信じていないようだった。
父は若くして小学校の校長になった。その頃の日記に、「花を入れ替えてくれたのは貴女ですね。運動場から貴女の声が聞こえる。美しい貴女の姿が見え、心躍る」などと書いている。
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