風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

星新一ワールド

2010-06-08 00:39:35 | たまに文学・歴史・芸術も
 週末、子供を連れて近所のBook offを訪れたところ、星新一さんの子供向けショート・ショート集を見つけて、思わず購入してしまいました。小・中学生の頃、なけなしの小遣いをはたいて買い集め、夢中になって読み耽った記憶が蘇り、子供にも、あの時の感動を味わわせてやりたいと思ったわけです。
 ところが自宅に戻ると、早速、手に取り、子供より先に読み耽ってしまいました。子供向けと言うのは、字を大きくして振り仮名を付けているだけで、中身はオトナもコドモもありません、短くてすっきり分かりやすい文章は、あの頃のままでした。
 久しぶりに読んで、あらためて多彩なスタイルに驚かされました。童話あり、寓話あり、はたまた子供に読ませるのを躊躇うほどのブラック・ジョークあり、人生論のアフォリズムを思わせるような余韻を残す切れ味鋭い秀作もあります。また、ある条件設定のもとに話を始め、テンポ良く読み進めさせ、流れるような論理的帰結に導きながら、予想外のオチで唸らせて裏切らない、いわばSF落語とでも呼べるような構成にも感心させられます。そして、さまざまな未来予想を描きながら、決してハッピー・エンドに終わることはなく、気が付くと虚無主義の闇が広がっていて、さりとて悲観するでもなく、まさに空想の世界で存分に遊ばせてくれて、現実世界に戻る時には、爽やかな一服の清涼感を与えてくれる。不思議な魅力と言うほかありません。
コメント
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