風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

大震災(6)ニッポンの意地

2011-03-21 13:07:09 | 時事放談
 地震発生当初、揺れだけでなく、大規模の津波が襲い掛かり、更に原子力事故まで誘発し、三重苦の中で、被害が拡大しないのは、日本の高い科学技術力と厳しい品質基準があるからだという賛辞が諸外国から寄せられたものでした。世界を席巻する日本のものづくりの品質の高さは誰しも認めるところであり、原爆を唯一経験し、原子力エネルギーに対する拒絶反応とそれ故に安全性に対する厳しい要求がある日本だからこそという暗黙の了解が前提にあったものと思われます。実際に、多くの家屋が倒壊を免れたことに対してあらためて驚異の目が向けられ、日本の耐震技術の面目躍如たるものがありましたが、時の経過とともに被害実態が明らかになるにつれ、「想定外」という言葉で語られることが多くなり、日本に寄せられてきた多大の信頼が徐々に崩れつつあります。岩手・宮城・福島三県の海岸にある堤防の延長約300kmの内、190kmが全・半壊し、「想定外」の規模の津波を防ぎ切れませんでしたし、五重の壁の防護を誇る原発も、停電に加えて津波で非常用電源が使用不能となり、「運転を止める」ところまでは良かったのですが、「炉心を冷やす」機能を失い、「放射能を閉じ込める」ことが出来るかどうかに不安を呼ぶことになりました。
 ただ、「想定外」の事態に直面した困難さに対して、見極めの甘さを今さらとやかく言っても仕方ありません。むしろ、日本の信頼感を揺さ振ったのは、危機が発生した後の対処の仕方、いわゆる危機管理のありようだったと思われます。いずれこのあたりの問題点の詳細や反省は明らかになるでしょうし、それを教訓として更に対策を施して将来に備えればよいのですが、政権交代を実現して1年半にしかならず、政権与党としてただでさえ未熟なのに、政治主導を唱えて省庁との連携がぎくしゃくしている民主党政権の性格が混乱に拍車をかけている側面は否めません。欧州連合のエネルギー担当委員は、原発事故への日本の対応について「信じられないほど場当たり的」だと批判したそうですが、避難地域を段階的に拡大しただけでなく、炉心の冷却手段一つとっても、当初、東電が海水を使用するのに消極的だったために対応が遅れたとか、素人目にも思いつきであれこれ手を出すばかりでなく、救援物資の輸送が困難など何か他の要望が上がってくれば何でも自衛隊に仕事を振って現場を徒に混乱させるというように、コントロール出来ていない様子が漏れ伝わって来ます。被災地で救援活動を行っていたドイツの民間団体「フメディカ」の救援チームは、日本政府が事実を隠蔽し、過小評価しているとして、早々に帰国してしまいました。もっとも、阪神大震災ともまた違う、これほどの広域にわたる大規模災害に直面して、正常に機能する危機管理を期待するのは酷と言えますし、評論家諸氏がとやかく言うほど簡単ではないはずで、半分は同情すべきだと思います。
 これに対し、自衛隊、警察、消防をはじめ、それが役割とは言え、危険に晒されながら現場で復旧作業に従事されている方々には頭がさがります。福島原発では、日立グループの社員100名も電源復旧のため防護服に身を固めて作業していると聞きました。東京都のハイパーレスキュー隊だったと記憶しますが、その隊長の記者会見で、隊員の活動を労い、目に涙を浮かべて隊員の家族を思い遣る姿に、胸を打たれました。日本の底力は、こうした現場での頑張り、現場力にあることを痛切に感じます。何事にも忍耐強く規律正しい、科学技術立国であり高品質の国ニッポン(漢字圏でしか通じない日本ではなく、世界に誇るブランドであるニッポンまたはJapan)の意地に賭けて、一日も早い復旧と復興を応援したいと思います。
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