生誕250年(というのは実は2年前)を記念して企画されたホノルル美術館所蔵の北斎展を見に行きました。同美術館が所蔵する浮世絵1万点とは凄まじい量ですが、品質も極めて高いことには驚かされます。200年近く前の「富嶽三十六景」の、まるで昨日刷られて今日見るような紺色の鮮烈さには、あらためて目を見張りました。日本に残るものは少なくて(しかも色褪せていて)海外に流出して大切に保存されている・・・それでは日本は庶民の文化をないがしろにしてきたのかと言うと、そうではなく、むしろ日本人の文化的成熟度の高さを示すものではないかと思います。つまり、日本人には当たり前だったことが、欧米人の目には驚愕の芸術に映ったものだろう、と。そして、それが里帰りして、あらためて日本人自身が自らの庶民文化の芸術性の高さを思い知らされた、と。
北斎と言えば、浮世絵界の最高峰(人によっては広重と双璧)、「森羅万象を描き」「生涯に3万点を超える作品を残し」「門人の数は極めて多く、孫弟子も含めて200人に近いと言われ」(Wikipedia)、浮世絵師だけでなく挿絵画家としても活躍した彼の影響力は、私たち庶民にとどまらず、「富嶽三十六景」や「北斎漫画」で世界的に知られ、ゴッホやルノワールなどの印象派絵画やガレの工芸にまで及び、アメリカの雑誌「ライフ」の企画「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」(1999年)で、日本人として唯一86位にランク・イン(Wikipedia)するほどです。改号30回、転居93回という奇人でもありました。
あらためて北斎を見て、風景画における彼の存在感の大きさに思い至りました。私が写真撮影する風景画のフレームワークは、北斎の「富嶽三十六景」にあったことを、今さらのように思い知らされたからです。私だけではなく、多くの日本人にとって、安定感ある構図は北斎から学んだと言っても過言ではないでしょう。そういう意味で、北斎に加えて広重の「東海道五十三次」など、永谷園が「お茶漬け海苔」のオマケとして1965年から97年まで実に30年以上にわたって続けた「東西名画選カード」プレゼントは偉大でした(絵柄はほかに「喜多川歌麿」「印象派ルノワール」など、全部で10種類もあったらしい。http://www.nttcom.co.jp/comzine/no029/long_seller/)。しかも北斎の凄いところは、写実的でありながら写実性を超えて、いわば彼の観念の「富嶽」を描いているところでしょう。「富嶽三十六景」で、富士山はそんなに大きく見えるはずがないとか、どこから描いたものか分からないとか言われますが、それは、かつての宮廷絵画のように巧妙に雲を取り込みながら、近景をぼかしつつ遠景を引き付けて実際の距離を超えさせてしまっているようです。
いつものことながら、本物の迫力には圧倒されます。色そのもの、そしてそのグラデーションの繊細さは、素材(紙の質)感と相俟って、実に美しい。浮世絵は、あらためて、北斎という作家と、刷り師との合作であり、職人芸の極致であることにも、開眼しました。そんな北斎展も残念ながら今日が千秋楽です(三井記念美術館)。前期(4/14~5/13)と後期(5/15~6/17)とで出展作品が違ったために、前期の目玉だったであろう「神奈川沖浪裏」「凱風快晴」「尾州不二見原」を見逃したのは残念でした。北斎の作品として、「北斎漫画」のほかに、「諸国滝廻り」や「諸国名橋奇覧」などのシリーズものも出展され、興味は尽きません。
北斎と言えば、浮世絵界の最高峰(人によっては広重と双璧)、「森羅万象を描き」「生涯に3万点を超える作品を残し」「門人の数は極めて多く、孫弟子も含めて200人に近いと言われ」(Wikipedia)、浮世絵師だけでなく挿絵画家としても活躍した彼の影響力は、私たち庶民にとどまらず、「富嶽三十六景」や「北斎漫画」で世界的に知られ、ゴッホやルノワールなどの印象派絵画やガレの工芸にまで及び、アメリカの雑誌「ライフ」の企画「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」(1999年)で、日本人として唯一86位にランク・イン(Wikipedia)するほどです。改号30回、転居93回という奇人でもありました。
あらためて北斎を見て、風景画における彼の存在感の大きさに思い至りました。私が写真撮影する風景画のフレームワークは、北斎の「富嶽三十六景」にあったことを、今さらのように思い知らされたからです。私だけではなく、多くの日本人にとって、安定感ある構図は北斎から学んだと言っても過言ではないでしょう。そういう意味で、北斎に加えて広重の「東海道五十三次」など、永谷園が「お茶漬け海苔」のオマケとして1965年から97年まで実に30年以上にわたって続けた「東西名画選カード」プレゼントは偉大でした(絵柄はほかに「喜多川歌麿」「印象派ルノワール」など、全部で10種類もあったらしい。http://www.nttcom.co.jp/comzine/no029/long_seller/)。しかも北斎の凄いところは、写実的でありながら写実性を超えて、いわば彼の観念の「富嶽」を描いているところでしょう。「富嶽三十六景」で、富士山はそんなに大きく見えるはずがないとか、どこから描いたものか分からないとか言われますが、それは、かつての宮廷絵画のように巧妙に雲を取り込みながら、近景をぼかしつつ遠景を引き付けて実際の距離を超えさせてしまっているようです。
いつものことながら、本物の迫力には圧倒されます。色そのもの、そしてそのグラデーションの繊細さは、素材(紙の質)感と相俟って、実に美しい。浮世絵は、あらためて、北斎という作家と、刷り師との合作であり、職人芸の極致であることにも、開眼しました。そんな北斎展も残念ながら今日が千秋楽です(三井記念美術館)。前期(4/14~5/13)と後期(5/15~6/17)とで出展作品が違ったために、前期の目玉だったであろう「神奈川沖浪裏」「凱風快晴」「尾州不二見原」を見逃したのは残念でした。北斎の作品として、「北斎漫画」のほかに、「諸国滝廻り」や「諸国名橋奇覧」などのシリーズものも出展され、興味は尽きません。