風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

アジアの声

2014-01-05 09:43:36 | 時事放談
 新年早々、中国や韓国は日本批判を繰り返しているようです。ご苦労なことです。もっとも彼らには旧暦の正月の方が大事でしょうから、この新年のメッセージは、まさに日本や欧米を意識したものなのでしょう。
 一昨日の産経Webによると、「中国共産党機関紙・人民日報は3日付の論評で、安倍首相の靖国神社参拝や、『強い日本を取り戻す戦いは始まったばかり』との年頭所感について、『拙劣な言動』『常軌を逸したパフォーマンス』と強烈に批判した」そうです。また、「論評は『安倍が首相に返り咲いて以来、日本はアジア、さらには世界のトラブルメーカーとなった』などと個人攻撃も展開」した上、「『強大な外圧なしに、意識が朦朧とした安倍が現実感を取り戻すことは不可能であり、出鱈目を止めることもあり得ない』と、国際社会が日本に“圧力”をかけることを求めた」のだそうです。中国にとっては、ちょっと元気が出て来た日本が、よほど気に食わないようです。そうかと言って、(かつて民主党政権時代のように)中国の顔色を窺い、あるいは(小沢氏のように)ご機嫌を窺い、気兼ねする日本に対しては、高圧的に振舞い、結局、友好的であろうとする気はさらさらなく、飽くまで東アジアの地に華夷秩序を確立し、精神的に優位に立ちたいだけのように映ります。
 一方、読売Webによると、「韓国の尹炳世外相は2日、外交省の仕事始めのあいさつで、安倍首相の靖国神社参拝について、『日本の政治指導者たちの歴史修正主義的な態度は自ら孤立を招くだけでなく、北東アジアの平和と協力の大きな障害物となっている』と改めて批判した」そうです。さて、本当に日本は「自ら孤立を招く」のか。産経Webには、東南アジア諸国では冷静な反応が目立つ、との記事もあり、正月休みの徒然に、記事を拾ってみました。

インドネシアで最も影響力のあるコンパス紙は、12月28日付の社説で安倍首相の参拝について、東シナ海の領土をめぐる日中の緊張が高まっているこの時期に行ったのは「適切なタイミングでなかった」としつつも、「(靖国問題で)自らを被害者と位置付ける中韓の主張は一面的な見解だ」とクギをさした。その上で、今回の参拝は戦死者の霊に祈りをささげ、日本国民が再び戦争の惨禍に苦しむことのないように取り組む決意を伝えたとする「安倍首相の見解」を紹介した。同紙はさらに、「靖国神社には、現在は戦争犯罪者と見なされている数百人だけでなく、戦争の犠牲となった(各国の)約250万人も祭られている」と指摘し、国に命をささげた人々のために参拝することは日本の指導者として当然だとする安倍首相の立場にも言及した。

シンガポールのストレーツ・タイムズ紙(12月27日付)は、安倍首相が参拝に踏み切ったのは、これまで摩擦を避けようと終戦記念日や春秋の例大祭で参拝を見送ったにもかかわらず中韓が強硬姿勢を崩さず、「冷え切った中韓との関係に改善の見込みは少ないと見切ったためだ」との分析記事を掲載。中韓の敵視政策が逆に参拝の呼び水となったとの見方を示した。(産経)

オーストラリアの有力紙オーストラリアンは28日付の社説で「日本のオウンゴール」との表現で、自ら招いた外交的失点と指摘した。同紙は安倍氏が憲法改正など安保戦略の抜本的見直しを進めていることについて「日本の軍国主義に苦しんだ(フィリピンなどの)国々からも支持を取り付けている」とする一方、他国の反発を招くような行動を続ければ「支持を失いかねない」と苦言を呈した。(共同)

 以上の三ヶ国は、いずれも大東亜戦争で多かれ少なかれ戦場となったところですが、所謂靖国問題そのものへの言及を避けているのは、内政干渉になりかねないことをわきまえているからでしょう。インドネシアは友好国らしく、日本の意図を正確に伝えようとしてくれています。まさにインドネシアの言うように、中・韓だけが被害者ではなく、日本人すらも被害者なのが当時の戦争というものであり、結果としてアジア諸国の解放と独立に繋がった側面も忘れていないということなのでしょう。華人社会・シンガポールの立場は冷静かつ見方も公正です。これを見ても、東南アジアにおける華人=華僑ではなく、飽くまで「華人」はそれぞれの居住国の国籍をもつ中華系住民であって、父祖の地である中国(あるいは中国大陸を支配した歴代王朝)よりも居住国との関係が深いことが分かります(因みに「華僑」とは中国籍をもつ海外移民とされます)。
 メディアではなく、政府の公式見解はどうでしょうか。

シンガポール外務省の報道官は29日、安倍晋三首相の靖国神社参拝を「遺憾だ」とする声明を出した。(中略)声明は、尖閣諸島や竹島をめぐる中韓との対立を念頭に「最近の一連の出来事によって、地域の緊張が高まっている」と指摘。こうした状況下での参拝は「さらなる反発感情を引き起こす可能性が高い」とした。(共同)

ベトナム外務省のルオン・タイン・ギ報道官は31日、安倍晋三首相の靖国神社参拝問題について「われわれは関心を持っており、日本側から説明を聞いた」とした上で、「日本が地域の平和と安定、協力のために、問題を適切に処理することを希望する」と述べた。(共同)

インド外務省のアクバルディン報道官は31日の記者会見で、安倍晋三首相の靖国神社参拝と中国や韓国の参拝への反発について問われ、「日本と他国が議論を深め、協力して問題を解決することを望む」と述べ、参拝自体については評価しなかった。(産経)

台湾の外交部(外務省に相当)は1日、新藤義孝総務相が同日、靖国神社に参拝したことを受け、「地域に不安を引き起こし、遺憾だ」とする声明を発表した。昨年12月26日の安倍晋三首相の参拝時と同様、「日本政府や政治家は史実を正視し、歴史の教訓をくみ取り、近隣の感情を傷つける行動をすべきではない」としている。(産経)

中国の王毅外相とロシアのラブロフ外相は30日、電話会談し、安倍晋三首相による靖国神社参拝を共に批判した上で、歴史問題で共闘する方針を確認した。中国外務省が31日までに明らかにした。王氏は「安倍(首相)の行為は、世界の全ての平和を愛する国家と人民の警戒心を高めた」と述べ、参拝を批判。その上で「(中露両国は)反ファシスト戦争の勝利国として共に国際正義と戦後の国際秩序を守るべきだ」と述べ、歴史問題で共闘するよう呼び掛けた。ラブロフ氏は「靖国神社の問題ではロシアの立場は中国と完全に一致する」と応じ、日本に対し「誤った歴史観を正すよう促す」と主張した。(共同)

 こうして見ると、台湾・外交部の反応に一部、オヤ?と思うところはありますが(国民党政権だからなのか)、概ね地域の緊張を高めることを懸念し、遺憾とするコメントが多いことが分かります。産経新聞のような保守系メディアは、靖国参拝そのものを問題視するものと、地域的な緊張の高まりを懸念するものとを混同し、ひっくるめて日本の危機を煽るところがありますが、明確に区別するべきだろうと思います。敢えて彼らの反応を解釈するならば、中・韓が昂ぶって騒いでいるときに、わざわざ神経を逆なでしなくても・・・と傍観者のように突き放すとともに、日本の立場は理解するし、存在感が増すばかりの中国への歯止めとして日本に期待しつつも、自らも中国との関係は深まるばかりであり、中国にはそれなりに配慮せざるを得ず、日・中の余計な緊張関係には関わりたくない、事を荒立てたのは日本なのだから、日本が解決するべき、といったような、やはり突き放す思いがあり、触らぬカミに祟りなし、といったところではないでしょうか。
 結果として、アジア広しと言えども、中・韓・ロシアのみが(ロシアはアジアの内か?疑問はありますが)、日本に対し、誤った歴史観を正す!?よう促すことで共闘しようとしている構図になることが分かります。この三ヶ国との因縁は、浅くありませんね。
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