ちょうど一ヶ月前、「香港の受難」と題するブログで、中国化に反発する香港の動きに触れましたが、その香港で「真の普通選挙」を求める民主派の学生や市民による抗議デモが、今日で5日目を迎えました。警官隊が使用する催涙ガスや催涙スプレーに対し、学生らが傘を開いて防御したことから、地元紙は今回のデモを「雨傘革命」と呼び(世界のメディアは「アンブレラ革命」と呼び)、傘が運動の象徴になってきたそうです。
昨日・今日と中国では国慶節の祝日でしたが、中国政府は休みどころではなく神経を尖らせていたようで、1日付の人民日報は、民主派のデモを「非合法な集会であり、社会の秩序を乱し、香港の経済と民生に大きく影響を与えている」と批判しました。香港市民に対して「香港政府の法に沿った措置と、香港警察の果断な法律執行を支持すべきだ」と要求し、デモの首謀者らは「違法行為に法的責任を負うべき」だとして、今後、解散に応じなければデモの強制排除や拘束をためらわない考えを強く示唆したそうです。翌2日付でも、デモを「少数の人の政治的訴えを法律に優先させており、私利のために香港の民意を乗っ取るものだ」と非難しました。中国・全人代常務委員会が民主派を事実上排除するとした決定は「挑戦不可能な法律的な地位がある」と強調し、デモを「違法活動」として「香港警察による違法活動への法に基づく処置を断固支持する」と開き直っているそうです(いずれも産経Webから)。
同じく産経Webによると、「過去の香港のデモは公園から政府庁舎まで集団で歩くケースが多く、周到に行われていた」のに対し、「今回は街頭占拠が何日も続く異例の事態。選挙制度に加え、香港政府や中国政府、さらに中国本土からやってくる観光客らの不作法な振る舞いへの不満などがないまぜとなり、混乱している」と伝えています。
ロイターは、そんな大陸から来た観光客の声を拾っていて、興味深く読みました。北京から来たある女性(29歳)は「人生で初めて政治を身近に感じた」「これは香港にとって歴史的瞬間だ」と語り、デモの様子を映した写真を友人たちとシェアしインターネットにも投稿する予定と言いつつ、「最初はかなり怖かったが、今はデモを強く支持している。いつの日か、中国(本土)でもこうしたことが起きると信じている」と語ったそうです。四川省成都から来た20代半ばの女性は、天安門事件は幼かったため記憶にないし、中国では「愛国主義教育」により、若者の多くが天安門事件などの反政府デモについて限られた知識しか持っていないと言い、「こういった運動を目にするのは初めて。現場は非常に整然と統制が守られている。思っていたような混乱状態とは違う」と印象を口にしたそうです。そんな、私たち日本人にも希望を抱かせるような、極めて真っ当で冷静で素直な声が挙がる一方で、政府の洗脳教育にも素直な人もいるようで、広東省深センから買い物に来たという女性は、デモ隊が民主的選挙を求めるのは「本土に対して礼を欠く行為」だと非難し、「中国政府は香港に大きな発展をもたらしたにもかかわらず、彼らはそれを認めていない」と憤りを見せたそうです。
ロイターは、最後に、本土育ちで現在は香港で慈善団体を運営している女性の、ちょっと諦め気味の冷めた声も伝えています。今回のデモが暴徒化した場合、中国政府が強硬な手段に訴える可能性があると警戒し、「共産党にはそれを実行する力がある。これまでも見てきたし、また繰り返されるだろう。もっと根の深い問題があり、それを正すには何世代もかかる。1つのデモでは解決しない」と語ったそうです。言論統制が厳しい中国で、戯画のような人民日報ばかり見せつけられて、さぞ硬直化しているだろうと思ったら、意外にもさまざまな言論があることが知れて、あらためて驚かされるとともに、今どきの中国の若者は政府の宣伝道具と化した新聞やテレビなどには見向きもしないでネットを見ているという、ある中国の広告代理店の営業の方の話を今さらのように思い出しました。
オバマ大統領ばかりでなく、台湾の馬英九総統までも、自らの「ひまわり学生運動」を意識してか、香港の学生デモを支持するコメントを出したのに対し、中国政府は、内政問題だからつべこべ言われたくないと、いつもの調子で不快感を露わにしていますが、これだけ世界に広く報道されると、日頃からその言動を警戒の目で見られている上に、世界中から総スカンを食らった天安門事件の二の舞を今さら演じるわけにもいかず、さりとて大陸本土への波及を懸念すればこそ一歩も引くわけにも行かず、膠着状態と言うよりガマン比べが続きそうな様相です。学生や市民ら参加者の中には疲労の色が目立ち始めたとか、道路占拠による交通混乱など市民生活への影響が出始めて反発する市民がいるとかの報道や、連日数万人が参加するデモ隊は「リーダー不在の烏合の衆」(香港紙記者)とも言われるのを見ると、台湾の整然とした、しかしぴ~んと背筋の通った「ひまわり学生運動」と比べて、ひ弱さを感じないわけには行きません。あの台湾の学生運動の陰に「李登輝さんあり」との噂がありますが、まさにそんな隠然たるカリスマあってのことだったのだと、そして香港にもそんな存在が欲しいものだと、ただ見守るだけの私は、あらためて台湾と香港の違いに思いを馳せます。英国から中国に返還されて僅か17年、「一国二制度」と言われながら、私たちの期待とは裏腹に、専制主義者にからめとられるのはげに恐ろしきものだとも思います。果たして台湾の人の目にはどのように映っているのでしょうか。
追記)近年、中国本土から香港に移民が大量に流入し、物価の高騰、学校・病院などの不足などで、地元住民の生活に影響が出ているほか、香港での雇用機会も新移民に奪われているといった弊害が報じられてきましたので、学生デモに対して、商売にならないと反発している商店主は大陸からの移民かも知れません。そういった人は中国政府の息がかかっていないとは誰が断言できましょう。
昨日・今日と中国では国慶節の祝日でしたが、中国政府は休みどころではなく神経を尖らせていたようで、1日付の人民日報は、民主派のデモを「非合法な集会であり、社会の秩序を乱し、香港の経済と民生に大きく影響を与えている」と批判しました。香港市民に対して「香港政府の法に沿った措置と、香港警察の果断な法律執行を支持すべきだ」と要求し、デモの首謀者らは「違法行為に法的責任を負うべき」だとして、今後、解散に応じなければデモの強制排除や拘束をためらわない考えを強く示唆したそうです。翌2日付でも、デモを「少数の人の政治的訴えを法律に優先させており、私利のために香港の民意を乗っ取るものだ」と非難しました。中国・全人代常務委員会が民主派を事実上排除するとした決定は「挑戦不可能な法律的な地位がある」と強調し、デモを「違法活動」として「香港警察による違法活動への法に基づく処置を断固支持する」と開き直っているそうです(いずれも産経Webから)。
同じく産経Webによると、「過去の香港のデモは公園から政府庁舎まで集団で歩くケースが多く、周到に行われていた」のに対し、「今回は街頭占拠が何日も続く異例の事態。選挙制度に加え、香港政府や中国政府、さらに中国本土からやってくる観光客らの不作法な振る舞いへの不満などがないまぜとなり、混乱している」と伝えています。
ロイターは、そんな大陸から来た観光客の声を拾っていて、興味深く読みました。北京から来たある女性(29歳)は「人生で初めて政治を身近に感じた」「これは香港にとって歴史的瞬間だ」と語り、デモの様子を映した写真を友人たちとシェアしインターネットにも投稿する予定と言いつつ、「最初はかなり怖かったが、今はデモを強く支持している。いつの日か、中国(本土)でもこうしたことが起きると信じている」と語ったそうです。四川省成都から来た20代半ばの女性は、天安門事件は幼かったため記憶にないし、中国では「愛国主義教育」により、若者の多くが天安門事件などの反政府デモについて限られた知識しか持っていないと言い、「こういった運動を目にするのは初めて。現場は非常に整然と統制が守られている。思っていたような混乱状態とは違う」と印象を口にしたそうです。そんな、私たち日本人にも希望を抱かせるような、極めて真っ当で冷静で素直な声が挙がる一方で、政府の洗脳教育にも素直な人もいるようで、広東省深センから買い物に来たという女性は、デモ隊が民主的選挙を求めるのは「本土に対して礼を欠く行為」だと非難し、「中国政府は香港に大きな発展をもたらしたにもかかわらず、彼らはそれを認めていない」と憤りを見せたそうです。
ロイターは、最後に、本土育ちで現在は香港で慈善団体を運営している女性の、ちょっと諦め気味の冷めた声も伝えています。今回のデモが暴徒化した場合、中国政府が強硬な手段に訴える可能性があると警戒し、「共産党にはそれを実行する力がある。これまでも見てきたし、また繰り返されるだろう。もっと根の深い問題があり、それを正すには何世代もかかる。1つのデモでは解決しない」と語ったそうです。言論統制が厳しい中国で、戯画のような人民日報ばかり見せつけられて、さぞ硬直化しているだろうと思ったら、意外にもさまざまな言論があることが知れて、あらためて驚かされるとともに、今どきの中国の若者は政府の宣伝道具と化した新聞やテレビなどには見向きもしないでネットを見ているという、ある中国の広告代理店の営業の方の話を今さらのように思い出しました。
オバマ大統領ばかりでなく、台湾の馬英九総統までも、自らの「ひまわり学生運動」を意識してか、香港の学生デモを支持するコメントを出したのに対し、中国政府は、内政問題だからつべこべ言われたくないと、いつもの調子で不快感を露わにしていますが、これだけ世界に広く報道されると、日頃からその言動を警戒の目で見られている上に、世界中から総スカンを食らった天安門事件の二の舞を今さら演じるわけにもいかず、さりとて大陸本土への波及を懸念すればこそ一歩も引くわけにも行かず、膠着状態と言うよりガマン比べが続きそうな様相です。学生や市民ら参加者の中には疲労の色が目立ち始めたとか、道路占拠による交通混乱など市民生活への影響が出始めて反発する市民がいるとかの報道や、連日数万人が参加するデモ隊は「リーダー不在の烏合の衆」(香港紙記者)とも言われるのを見ると、台湾の整然とした、しかしぴ~んと背筋の通った「ひまわり学生運動」と比べて、ひ弱さを感じないわけには行きません。あの台湾の学生運動の陰に「李登輝さんあり」との噂がありますが、まさにそんな隠然たるカリスマあってのことだったのだと、そして香港にもそんな存在が欲しいものだと、ただ見守るだけの私は、あらためて台湾と香港の違いに思いを馳せます。英国から中国に返還されて僅か17年、「一国二制度」と言われながら、私たちの期待とは裏腹に、専制主義者にからめとられるのはげに恐ろしきものだとも思います。果たして台湾の人の目にはどのように映っているのでしょうか。
追記)近年、中国本土から香港に移民が大量に流入し、物価の高騰、学校・病院などの不足などで、地元住民の生活に影響が出ているほか、香港での雇用機会も新移民に奪われているといった弊害が報じられてきましたので、学生デモに対して、商売にならないと反発している商店主は大陸からの移民かも知れません。そういった人は中国政府の息がかかっていないとは誰が断言できましょう。