ネット配信された中国の空母「遼寧」の写真を見たが、練習艦とは言えなかなか勇ましいものだ。なにしろ排水量6万7500トン、全長305メートルと巨大で、中国当局はさぞ誇らしいことだろう。台湾当局はピリピリしている。
これは遡ること先月24日夕、自衛隊艦船が確認した、東シナ海中部における、中国海軍の航空母艦「遼寧」1隻、ミサイル駆逐艦3隻、ミサイルフリゲート2隻、ミサイルコルベット1隻、総合補給艦1隻からなる編隊の航行に始まる。翌25日、「遼寧」の編隊は、第1列島線(九州~沖縄~台湾~フィリピン)上の宮古海峡を越えて初めて西太平洋に進出した。その後、台湾の東部を回り込むような形で翌26日にバシー海峡を通過し、海南島の海軍基地に寄港し、南シナ海で艦載機・殲(J)15戦闘機の発着艦訓練を約10日間にわたって行ったらしい。この往復の行程で、台湾本島をぐるりとほぼ一周した形になる。
このことからも分かる通り、トランプ氏が台湾・蔡英文総統と電話会談し、中国と台湾の「一つの中国」に疑義を表明していることに激怒した中国は、米国を牽制するとともに(米国を威嚇するわけにはいかないから)台湾を威嚇したものと見られている。日本の防衛省も、端的に(海軍力の象徴である)空母の遠洋展開能力誇示を狙ったものと分析した。そして、忘れた頃に・・・1月11日、「遼寧」の編隊は南シナ海での訓練を終えて台湾海峡に進入、海峡中間線の中国大陸側を北上していることが台湾国防部によって確認された。母港の山東省・青島へ帰還の途に就いたようだ。
このときの動きから、もう一つのメッセージを読み取る見方がある。実のところ「遼寧」は南シナ海で実施した艦載機の発着艦訓練を西太平洋では実施することなく、米本土から西太平洋に向かっていた米原子力空母カール・ビンソンを中心とする空母打撃群が到着する前に海域を離れ、“ニアミス”を回避した。艦載機の数や性能などで大きく劣る米空母との対峙を、更には米国への直接的な挑発となるのを避けて自制したというものである。一連の航海で、高度な技術が求められる夜間の発着艦訓練も行われなかったという。中国は初の空母「遼寧」の艦隊が実戦的な訓練を行っていると強調するが、「遼寧」についてこれまで指摘されて来たように所詮は練習艦であり、その実力は甚だ怪しい。就役した2012年当時は、「張り子の虎」だと嘲笑されたものだった。その後は語られること少ないが、改良が加えられてそれなりにまともなカタチになったのか、周辺国としては脅威としてそっとしておいた方が軍事予算を使う口実が出来て都合がよいのか。
実に30年以上前に起工されながらソ連崩壊で建造が中断していた空母「ヴァリャーグ」を、マカオの企業が海上カジノに使用すると言ってスクラップ同然でウクライナから購入したのは1998年のことだった。しかしマカオの港は水深10メートル程しかないため、マカオでカジノに使用されるわけはなく、6万トン級の大型艦はそのまま大連港に入った。装備を取り外した状態で引き渡されたため、蒸気タービンによる動力システムの修復すら難航したという。しかし空母自体を取り繕ったところで、空母の戦闘力は艦載機の性能によるところが大きい。戦闘機・殲(J)15は、こちらもソ連崩壊時にウクライナに残されたSu-33の試作機「T-10K」を購入しコピーしたもので、出力不足が指摘される上、「遼寧」には艦載機を蒸気の力で打ち出すカタパルト(射出機)がなく、搭載武器の重量も制限されるようだ。パイロットの訓練の精度からみても複雑な運用は困難だろうとの専門家の声もある。主力の戦闘機だけではなく、艦載の空中給油機や空母の目となる早期警戒機もないと言われる。さらに空母は単艦で作戦行動するわけではなく、空からの脅威を排除するイージス艦などの防空艦や、潜水艦を寄せ付けない高度な対潜能力(ASW)を持つ護衛艦艇も随伴する。米海軍はこれらの運用に、既に80年の実戦経験があるが、当然のことながら中国海軍のこうした能力はこれからで、その筋の専門家によると5年や10年はかかるものだと言う。
前置きが長くなったが、アリューシャン列島から日本列島、さらに台湾、フィリピンへと繋がる島々によって太平洋への海洋進出を阻まれる中国にとって「核心的利益」の第一は(2009年7月の米中戦略経済対話において戴秉国国務委員が語ったところによれば)「国家主権と領土保全(国家主権和領土完整)」であり、その第一は「台湾」問題であり、第二は「一つの中国原則」とされている(続いてチベット独立運動問題、東トルキスタン独立運動問題、南シナ海問題(九段線・南海諸島)、そして尖閣諸島問題)。因みに核心的利益の第二は「国家の基本制度と安全の維持(維護基本制度和国家安全)」であり、第三は「経済社会の持続的で安定した発展(経済社会的持続穏定発展)」だそうだ(相変わらずWikipediaでは第一と第二の文言の中国語原文が逆になっている)。
タイトルに言う「上海の旅」とどう関わるのかと言うと、行きも帰りも上海・浦東空港を使ったのだが、国際線ターミナルに「International & Hong Kong, Macau, Taiwan Departures」と書いてあることに、今回、初めて気がついたのだった(上の写真参照)。香港とマカオは一国二制度の対象地域ではあるものの今や中国の一部だが、台湾もそうだとさりげなく主張しているのである。さすがに何でもありの中国でも、香港とマカオと台湾を国内線ターミナルに移すところまでは行っていないのは、中国人なりのバランス感覚!?だろうか。
これは遡ること先月24日夕、自衛隊艦船が確認した、東シナ海中部における、中国海軍の航空母艦「遼寧」1隻、ミサイル駆逐艦3隻、ミサイルフリゲート2隻、ミサイルコルベット1隻、総合補給艦1隻からなる編隊の航行に始まる。翌25日、「遼寧」の編隊は、第1列島線(九州~沖縄~台湾~フィリピン)上の宮古海峡を越えて初めて西太平洋に進出した。その後、台湾の東部を回り込むような形で翌26日にバシー海峡を通過し、海南島の海軍基地に寄港し、南シナ海で艦載機・殲(J)15戦闘機の発着艦訓練を約10日間にわたって行ったらしい。この往復の行程で、台湾本島をぐるりとほぼ一周した形になる。
このことからも分かる通り、トランプ氏が台湾・蔡英文総統と電話会談し、中国と台湾の「一つの中国」に疑義を表明していることに激怒した中国は、米国を牽制するとともに(米国を威嚇するわけにはいかないから)台湾を威嚇したものと見られている。日本の防衛省も、端的に(海軍力の象徴である)空母の遠洋展開能力誇示を狙ったものと分析した。そして、忘れた頃に・・・1月11日、「遼寧」の編隊は南シナ海での訓練を終えて台湾海峡に進入、海峡中間線の中国大陸側を北上していることが台湾国防部によって確認された。母港の山東省・青島へ帰還の途に就いたようだ。
このときの動きから、もう一つのメッセージを読み取る見方がある。実のところ「遼寧」は南シナ海で実施した艦載機の発着艦訓練を西太平洋では実施することなく、米本土から西太平洋に向かっていた米原子力空母カール・ビンソンを中心とする空母打撃群が到着する前に海域を離れ、“ニアミス”を回避した。艦載機の数や性能などで大きく劣る米空母との対峙を、更には米国への直接的な挑発となるのを避けて自制したというものである。一連の航海で、高度な技術が求められる夜間の発着艦訓練も行われなかったという。中国は初の空母「遼寧」の艦隊が実戦的な訓練を行っていると強調するが、「遼寧」についてこれまで指摘されて来たように所詮は練習艦であり、その実力は甚だ怪しい。就役した2012年当時は、「張り子の虎」だと嘲笑されたものだった。その後は語られること少ないが、改良が加えられてそれなりにまともなカタチになったのか、周辺国としては脅威としてそっとしておいた方が軍事予算を使う口実が出来て都合がよいのか。
実に30年以上前に起工されながらソ連崩壊で建造が中断していた空母「ヴァリャーグ」を、マカオの企業が海上カジノに使用すると言ってスクラップ同然でウクライナから購入したのは1998年のことだった。しかしマカオの港は水深10メートル程しかないため、マカオでカジノに使用されるわけはなく、6万トン級の大型艦はそのまま大連港に入った。装備を取り外した状態で引き渡されたため、蒸気タービンによる動力システムの修復すら難航したという。しかし空母自体を取り繕ったところで、空母の戦闘力は艦載機の性能によるところが大きい。戦闘機・殲(J)15は、こちらもソ連崩壊時にウクライナに残されたSu-33の試作機「T-10K」を購入しコピーしたもので、出力不足が指摘される上、「遼寧」には艦載機を蒸気の力で打ち出すカタパルト(射出機)がなく、搭載武器の重量も制限されるようだ。パイロットの訓練の精度からみても複雑な運用は困難だろうとの専門家の声もある。主力の戦闘機だけではなく、艦載の空中給油機や空母の目となる早期警戒機もないと言われる。さらに空母は単艦で作戦行動するわけではなく、空からの脅威を排除するイージス艦などの防空艦や、潜水艦を寄せ付けない高度な対潜能力(ASW)を持つ護衛艦艇も随伴する。米海軍はこれらの運用に、既に80年の実戦経験があるが、当然のことながら中国海軍のこうした能力はこれからで、その筋の専門家によると5年や10年はかかるものだと言う。
前置きが長くなったが、アリューシャン列島から日本列島、さらに台湾、フィリピンへと繋がる島々によって太平洋への海洋進出を阻まれる中国にとって「核心的利益」の第一は(2009年7月の米中戦略経済対話において戴秉国国務委員が語ったところによれば)「国家主権と領土保全(国家主権和領土完整)」であり、その第一は「台湾」問題であり、第二は「一つの中国原則」とされている(続いてチベット独立運動問題、東トルキスタン独立運動問題、南シナ海問題(九段線・南海諸島)、そして尖閣諸島問題)。因みに核心的利益の第二は「国家の基本制度と安全の維持(維護基本制度和国家安全)」であり、第三は「経済社会の持続的で安定した発展(経済社会的持続穏定発展)」だそうだ(相変わらずWikipediaでは第一と第二の文言の中国語原文が逆になっている)。
タイトルに言う「上海の旅」とどう関わるのかと言うと、行きも帰りも上海・浦東空港を使ったのだが、国際線ターミナルに「International & Hong Kong, Macau, Taiwan Departures」と書いてあることに、今回、初めて気がついたのだった(上の写真参照)。香港とマカオは一国二制度の対象地域ではあるものの今や中国の一部だが、台湾もそうだとさりげなく主張しているのである。さすがに何でもありの中国でも、香港とマカオと台湾を国内線ターミナルに移すところまでは行っていないのは、中国人なりのバランス感覚!?だろうか。