CNNの世論調査では、就任式直前のトランプ氏の支持率は僅かに40%、近年稀に見る低さだったらしい。オバマ氏が一期目就任直前に84%だったのと比べると、その差は歴然としている。ツイッターで個別企業に圧力をかけて対米投資を促し、就任早々、NAFTA再交渉やTPP永久離脱を決めるなど横暴とも言える大統領令を連発するなど、やりたい放題で、こうなるとオバマ氏の善人振りが際立ってしまう(笑)。
この支持率に見られるように、トランプ氏はアメリカを分断してしまった。否、トランプ氏が分断したと言うよりも、既にオバマ前大統領の時代に分断が決定的なものとなり、トランプ氏は単にその結果として登場しただけのことだろう。それが「トランプ現象」と呼ばれるものの実体だ。フォーリン・アフェアーズ誌などを読んでいると、「ポピュリズムは民主主義が問題に直面していることを示す現象に他ならない」(シェリ・バーマン氏)ということになる。より踏み込んで言えば、「トランプ氏が支持を集めたのは、そのカリスマや支持者たちの権威主義志向よりも、むしろ、格差の拡大、賃金の停滞、コミュニティの劣化、議会の膠着状態、そして選挙への大規模な資金の流入という問題だった」(同)。こうした「現実に向き合おうとしないエリートやその制度(民主主義)」(同)が、普通の人々の立場から批判を受け、もっと言うと愛想をつかされ、今まさにリベラル民主主義の器量が問われている。その意味でBREXITに揺れる欧州とも根っこは同じようだ。
格差拡大という点では、最近、貧困撲滅に取り組む国際NGO「オックスファム」が、世界で最も裕福な8人が保有する資産は、世界の人口のうち経済的に恵まれない下から半分にあたる約36億人が保有する資産とほぼ同じだったとする報告書を発表したのが記憶に新しい。その内の6人は米国人だ。ビル・ゲイツ氏、ジェフ・ベゾス氏、マーク・ザッカーバーグ氏、ラリー・エリソン氏といった超有名IT長者(伝説の創業者)のほか、投資家ウォーレン・バフェット氏、そしてマイケル・ブルームバーグ氏は前ニューヨーク市長と言うより通信会社ブルームバーグ創業者と言うべきだろう。こうした文脈で、世界中の資産家が逃避していたことを暴露したパナマ文書も、トランプ現象を後押ししたことだろう。
もっとも、英国がEUから離脱したのは、単一通貨ユーロにしてもシェンゲン条約にしても元々EUから距離を置いていたことを考えれば、大きな歴史の流れの中ではある種の必然だったと割り切ることも出来るが、トランプ氏の大統領就任は、どうにも解せない。米国は懐が深いと言うほかない。
そんな欧米諸国から経済制裁を受けているロシアは、それ見たことかと、相手の不幸が愉快でたまらないだろうし、トランプ大統領の秘密を握っているのかどうか知る由もないが、プーチン大統領に擦り寄るトランプ氏に多いに期待していることだろう。欧米を、それこそ分断できればしめたものだ。
他方、中国はかなり困惑しているのではないかと想像する。何より「一つの中国」に縛られない米大統領発言にはぶったまげたことだろう。1980年代の対日貿易摩擦のような一種の貿易戦争が勃発しそうな勢いでもある。さらに、国営放送が大統領就任式を生中継しなかったのは、就任演説の中で中国非難発言が飛び出しかねないことを恐れたからだと報じられているが、もっと言うと、米国大統領選挙制度そのもの、前政権のオバマ前大統領がやって来たことを全否定するようなトランプ大統領が合法的に登場する西側民主主義陣営の選挙制度なるものを大いに警戒していると思う。民は之に由らしむべし、之を知らしむべからず、の中国だ。余計な情報を人民に与えたくないだろう。
そして日本では、米国のTPP離脱でアベノミックスが大いなる挫折を味わうことになった。今こそ自由貿易や日米同盟の意義をトランプ大統領に説くべしとの声が喧しく、いったん付き合うとよく傾聴し実は好かれるタイプらしいトランプ氏に対して、人たらしの安倍首相に期待しよう。人間として善人で政治家としては不作為だったオバマ前大統領と比べれば、トランプ大統領は就任演説でWe will no longer accept politicians who are all talk and no action - constantly complaining but never doing anything about it. The time for empty talk is over.などと豪語するほど、Deal(駆引き)に走ると厄介だが、経営者らしい迅速な決断と行動に期待できそうだ。そして、そうであればなおのこと、トランプ大統領を奇禍として、米国が日本に対して陰に陽に課して来た足枷や嫌がらせを不合理として撤廃し、徐々に日本の自立度を高める方向に踏み出すべきだし、トランプ氏なら話が通じるのではないかと期待する。
この支持率に見られるように、トランプ氏はアメリカを分断してしまった。否、トランプ氏が分断したと言うよりも、既にオバマ前大統領の時代に分断が決定的なものとなり、トランプ氏は単にその結果として登場しただけのことだろう。それが「トランプ現象」と呼ばれるものの実体だ。フォーリン・アフェアーズ誌などを読んでいると、「ポピュリズムは民主主義が問題に直面していることを示す現象に他ならない」(シェリ・バーマン氏)ということになる。より踏み込んで言えば、「トランプ氏が支持を集めたのは、そのカリスマや支持者たちの権威主義志向よりも、むしろ、格差の拡大、賃金の停滞、コミュニティの劣化、議会の膠着状態、そして選挙への大規模な資金の流入という問題だった」(同)。こうした「現実に向き合おうとしないエリートやその制度(民主主義)」(同)が、普通の人々の立場から批判を受け、もっと言うと愛想をつかされ、今まさにリベラル民主主義の器量が問われている。その意味でBREXITに揺れる欧州とも根っこは同じようだ。
格差拡大という点では、最近、貧困撲滅に取り組む国際NGO「オックスファム」が、世界で最も裕福な8人が保有する資産は、世界の人口のうち経済的に恵まれない下から半分にあたる約36億人が保有する資産とほぼ同じだったとする報告書を発表したのが記憶に新しい。その内の6人は米国人だ。ビル・ゲイツ氏、ジェフ・ベゾス氏、マーク・ザッカーバーグ氏、ラリー・エリソン氏といった超有名IT長者(伝説の創業者)のほか、投資家ウォーレン・バフェット氏、そしてマイケル・ブルームバーグ氏は前ニューヨーク市長と言うより通信会社ブルームバーグ創業者と言うべきだろう。こうした文脈で、世界中の資産家が逃避していたことを暴露したパナマ文書も、トランプ現象を後押ししたことだろう。
もっとも、英国がEUから離脱したのは、単一通貨ユーロにしてもシェンゲン条約にしても元々EUから距離を置いていたことを考えれば、大きな歴史の流れの中ではある種の必然だったと割り切ることも出来るが、トランプ氏の大統領就任は、どうにも解せない。米国は懐が深いと言うほかない。
そんな欧米諸国から経済制裁を受けているロシアは、それ見たことかと、相手の不幸が愉快でたまらないだろうし、トランプ大統領の秘密を握っているのかどうか知る由もないが、プーチン大統領に擦り寄るトランプ氏に多いに期待していることだろう。欧米を、それこそ分断できればしめたものだ。
他方、中国はかなり困惑しているのではないかと想像する。何より「一つの中国」に縛られない米大統領発言にはぶったまげたことだろう。1980年代の対日貿易摩擦のような一種の貿易戦争が勃発しそうな勢いでもある。さらに、国営放送が大統領就任式を生中継しなかったのは、就任演説の中で中国非難発言が飛び出しかねないことを恐れたからだと報じられているが、もっと言うと、米国大統領選挙制度そのもの、前政権のオバマ前大統領がやって来たことを全否定するようなトランプ大統領が合法的に登場する西側民主主義陣営の選挙制度なるものを大いに警戒していると思う。民は之に由らしむべし、之を知らしむべからず、の中国だ。余計な情報を人民に与えたくないだろう。
そして日本では、米国のTPP離脱でアベノミックスが大いなる挫折を味わうことになった。今こそ自由貿易や日米同盟の意義をトランプ大統領に説くべしとの声が喧しく、いったん付き合うとよく傾聴し実は好かれるタイプらしいトランプ氏に対して、人たらしの安倍首相に期待しよう。人間として善人で政治家としては不作為だったオバマ前大統領と比べれば、トランプ大統領は就任演説でWe will no longer accept politicians who are all talk and no action - constantly complaining but never doing anything about it. The time for empty talk is over.などと豪語するほど、Deal(駆引き)に走ると厄介だが、経営者らしい迅速な決断と行動に期待できそうだ。そして、そうであればなおのこと、トランプ大統領を奇禍として、米国が日本に対して陰に陽に課して来た足枷や嫌がらせを不合理として撤廃し、徐々に日本の自立度を高める方向に踏み出すべきだし、トランプ氏なら話が通じるのではないかと期待する。