風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

サッカーW杯と中国の夢

2018-07-13 02:39:10 | 時事放談
 日本代表チームが勝ち進めなかったベスト8に勝ち残ったブラジルとウルグアイはベスト4には勝ち進むことが出来ず、W杯はこのあたりからほぼ欧州勢の独擅場となった。サッカーは世界のスポーツというのはその通りだが、その面子を見ていると、かつての帝国主義時代の植民地支配を彷彿とさせる…とは言い過ぎだろうか。
 その意味で、新・植民地主義で世界を席巻しつつある中国が、代表チームの出場は叶わなかったものの、スポンサーとして露出度を上げているのは、なかなか象徴的だ。FIFAパートナー7社、ロシアW杯スポンサー5社及び地域スポンサー3社の合計15社中7社が中国企業で、W杯期間中の広告費24億ドル中、中国企業は8億3500万ドルと35%を占める最大勢力で、アメリカ(4億ドル)の2倍、地元ロシア(6400万ドル)の実に13倍だそうである。FIFAにとって、中国市場の重要度はいやが上にも増しているのだ。3年前のFIFA汚職スキャンダルで、会長をはじめ数名の幹部が逮捕され、イメージダウンを恐れた国際ブランドのいくつかがスポンサーを降りたことも影響しているかも知れない。
 また、繰り返しになるが中国代表チームの出場は叶わなかったものの、最大規模のメディア記者を派遣しているのも中国らしい。国内で報道規制を敷く中国にあって、安心して報道できるスポーツは国民の関心も高い(純粋に勝敗を楽しむだけでなく、賭博による射幸心を満足させる意味合いもあるらしい)というのが、どうやら背景にあるらしい。
 さらにしつこく繰り返すが、中国代表チームの出場は叶わなかったものの、中国で売れたチケット4万枚は、ドイツの3分の2の規模に相当し、英国を上回ったらしい。中国の規模(物量)にはあらためて目を見張る。
 それもこれも、今や独裁者となった習近平国家主席が熱烈なサッカーファン(鉄桿足球迷)として知られるからに他ならない。かつて国家副主席だった2011年7月、韓国民主党党首・孫鶴圭氏から韓国サッカーの星・朴智星のサイン入りサッカーボールを贈られて、ひとしきりサッカー談義に花を咲かせた習近平氏は、中国がFIFAワールドカップに出場し、FIFAワールドカップを開催し、FIFAワールドカップで優勝するのが「私の(三つの)中国サッカーの夢(中国足球夢)」だと述べたらしい。実際に2012年11月に政権を握った習近平は、2015年2月の第18期 中央全面深化改革委員会 第10回会議で「中国サッカー改革発展全体計画」という単一のスポーツに限定した全体計画を採択するという、前代未聞の事態をやってのけたというのだ。そして2025年迄に中国国内に5万カ所のサッカースクール(足球院校)を開設して若手選手の育成に励み、2030年のW杯開催国に立候補し、2050年までに優勝することを目標に掲げているらしい(このあたりは北村豊氏による)。
 鳴り物入りの一帯一路も、マレーシアをはじめとして綻びが見え始めているが、どうも物量(カネ)に飽かせた計画は、中国の夢と言うより習近平氏個人の夢と言った方がよさそうなだけに、とても上手く行きそうにはないように思うが、果たしてどうだろうか。鶴の一声で国全体が本当に動くのだろうか。これまた中国における大いなる実験である・・・
コメント
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