風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

自民党総裁選挙

2018-09-22 11:04:34 | 時事放談
 一昨日の自民党・総裁選挙では、下馬評通り・・・と言うより当然のように、安倍さんが三選を決めた。外交でほぼ文句なしの成果を挙げている以上、内政では大いに不満で、とりわけ経済面では金融緩和以外に策らしい策が見当たらなくても、少子化による人手不足や世界経済の好調に助けられてそれなりのパフォーマンスを数字として出している以上、現職有利は動かない。モリ・カケ問題では、既にそれ以前からマスコミに叩かれていた安倍さんが、大人げなくムキになるところがあるものだから、鶏が先か卵が先かは分からないが、益々、マスコミの印象操作に拍車がかかったのだろう。官邸への過度の権力集中が簡単に終わりそうにないことから、文書改竄などの許し難い官僚の政治への擦り寄りや、必要以上の忖度といった、霞ヶ関ムラの悪弊がやむを得ず? 開き直って? 官僚の反乱として? これ見よがしの嫌がらせのように? 曝け出されて、それでも問題の所在が明らかにされないものだから、「安倍嫌い」であら探しに余念がないリベラル・メディアやレッテル貼りの批判しか出来ない野党に「長期政権の驕り」などと印象的に決めつけられて、イメージダウンを招いてしまった。狭量で大人げない対応しかできない(というのが玉にキズの)安倍政権の自業自得と言わざるを得ず、総体的にイメージが悪くなったが、見ている人は見ているので、安倍政権の支持率は下がり切らない。それがリベラル・メディアには癪にさわって仕方ないから、あら探しに益々拍車がかかる・・・政権とメディアの不幸な関係の連鎖だ。
 それはともかく、今回の選挙結果を受けて、麻生太郎さん(副総理兼財務相)は、「どこが(石破候補の)善戦なんだ。(善戦と報じたメディアに)ぜひ聞かせてもらいたい」と吠えたらしい。べらんめぇ調で(いまどき珍しく)言いたい放題の麻生さんのことは嫌いではない・・・などと勿体つけた言い方になるのは、時々、見識のない発言があってガッカリさせるからだが、今回も、ガッカリで、そんなケツの穴が小せぇことを言うんじゃあねえよぉ、などと、こちらもべらんめぇ調で返したくなる。
 確かに安倍さんがダブルスコアで勝ったという事実を捉えれば、日頃、リベラル・メディアのネガティヴ・キャンペーンを腹に据えかねている側として「どこが善戦なんだ」と凄みたくなるのも分からないではない。しかし、そもそも安倍一強と呼ばれる自民党にあって、負け戦になるであろうことを覚悟して立候補して無投票という沈滞ムードを回避した石破さんの勇気は称えられて然るべきだし、そんな石破さんに勝ち目がなかったのは分かり切っていたことで、問題はどれだけ票を伸ばせるかに関心が移っていたから、石破さんが国会議員票で事前の予想(50)を上回る73票、党員票で予想(156、いずれも共同通信)を上回る181票、併せて200に届かない可能性も指摘されながら254票を獲得したのは善戦したと言うべきだし、石破さんご本人も反論されたように党員票45%という数字は決して小さいものではない。
 こういう場面での各方面の発言には個性が出ていて面白い。
 自民党若手のホープ・小泉進次郎さんは、どちらを支持するのか、なかなか(見え透いてはいたものの)態度を明らかにしなくて、一部では評判がよろしくなかったほどだったが、最終的に石破さんに投票した理由について、「違う声を強みに変える自民党でなければならないと思った」と述べたのは、筋を通して相変わらず清々しい。他方、まだ私も期待を捨て切れない小渕優子さんも石破さんへの支持を表明して、選挙後、「安倍首相のもとで一致団結する」との殊勝な談話を発表したのは、どちらかと言うと勝者が言うセリフであって、敗者が言うのはカッコ良いことではない。その意味で、TPP交渉で男を上げた甘利明さんが、今回、安倍さんの選対本部で事務総長の要職を務めて、選挙結果について「安倍候補の大勝だったが、石破候補も健闘したことが党内で共有された。戦いが終わればノーサイド。自民党が一体となって国家、世界の課題を解決するため新総裁を中心に邁進できる」と発言したのは、模範解答のように正しくて文句のつけようがない。極め付けは、志位さん(共産党委員長)で、石破さんが集めた45%は安倍政権に対する国民の批判の強まりを反映した数字だと評し、安倍さんが国会議員票で81%を獲得したことについては自民党の国会議員が国民の意識と相当離れているところにあるとの見方を示した、というのはその通りだと思うし、毎度のことながら弁舌滑らかだが、お節介ながらそれでも共産党が自民党に勝てずに弱小であり続け、お世辞にも国民の意識を代表出来ているとは言えない根本的な理由を考え直した方がよいのではないだろうか。
 安倍一強と言って、何が問題かと言うと、一強そのものより、他が劣化しているのか、はたまた安倍さんが出る杭を抑えて後継を育てていないのか、いずれにしても以前のような競争状態にない方に問題がある。かつては自民党内の派閥が良くも悪くも相互に切磋琢磨しながら人材を育てる器としてまがりなりにも機能していた。今は派閥の存在も器の機能も格段に弱まってしまった。安倍さんにはもう次の総裁選はないのだから、石破さんも進次郎さんも優子さんも取り込みながら、ここらで長い目で見て政治家を鍛える取組みにチャレンジして欲しいものだ(が、結局、安倍さんの悲願である憲法改正に向けた体制づくりのために歪められてしまうのだろうな・・・まあ、それも大事なことであるのは認めるのだけれども)。
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