風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

甘えモード?の韓国

2019-11-12 00:05:30 | 時事放談
 相変わらず、責任ある立場の人がよくもまあ見え透いたことをいけしゃあしゃあと垂れ流せるものだと感心する(笑)。韓国名物のデモ参加人数の水増しがハンパじゃないのはこの際ご愛嬌ということにしよう。今月4日にバンコクで開催されたASEAN関連首脳会議に出席中の「日韓首脳のやりとり」(日本政府)は会談でも立ち話でもなく「言葉を交わしたという理解」(西村明宏官房副長官)などと軽く受け流したのに対して、韓国政府は堂々と「歓談」と発表し、野党議員から「韓日の発表に温度差が大きい」と指摘された韓国の首相は「対話の内容も紹介せず、国際的な基準に合うとは思わない」と日本の対応に言いがかりをつけた。昨日、韓国大統領府の国家安保室長は「(GSOMIAは)韓日両国が解決すべき問題で、韓米同盟とは全く関係ない」「韓国の立場から見れば、最近の韓日関係悪化の根本原因は日本がつくった」と強弁し、GSOMIA協定延長のためには日本の輸出管理厳格化措置の撤回が必要だと主張したらしい。イデオロギーに凝り固まって、自らの耳に心地よいファンタジーに酔っていると、そのうち悪酔いして現実の厳しさに目覚めざるを得なくなる。それとも、そろそろ日本に助け舟を出して欲しいと甘える高等戦術だろうか(笑)。
 この輸出管理厳格化措置について、ちょっとアカデミックな装いで解説(憶測)を試みる(笑)。
 一ヶ月ほど前に、最近はやりつつあるeconomic statecraft(「経済外交策」「経済的国政術」などと訳される)について書いた(https://blog.goo.ne.jp/mitakawind/d/20191011)。対外政策の内、経済を手段とするもので(他に、軍事力の行使や威嚇によるmilitary statecraft、交渉によるdiplomacy、言語シンボルの意図的操作によるpropagandaがある)、David A. Baldwin氏によると、positiveなものとnegativeなものに分けられる。自由貿易を国是とする日本は主にpositiveなもの(広い意味での報酬やそれを約束するもので、代表例は政府開発援助)を使って来たが、negativeな事例もないわけではない。北朝鮮に対する禁輸と、このたびの韓国に対する輸出管理厳格化措置がそれで、いずれも朝鮮半島に関するのは偶然ではないかも知れない(笑)。その目指すところ(戦略目標)について、長谷川将規氏は次の8つを挙げておられる。
(1)シグナル: 経済的な損害や利益(あるいはこれらの脅しや約束)を与えて相手にメッセージを送る
(2)強化: 様々な経済政策を通じて、自国や友好国のパワーを維持・補強する
(3)相殺: 脅威国や海外からの経済的悪影響を無効化する
(4)封じ込め: 経済的締め付けによって相手のパワーを劣化させる
(5)強制: 経済的損害やその脅しによって相手を譲歩させる
(6)買収: 経済的利益やその約束と引き換えに相手を譲歩させる
(7)抽出: 相手の経済的依存に付け込み、相手から富や資源を調達する
(8)誘導: 持続的な経済利益の提供を通じて、相手国内にシンパを増やし、相手国を迎合に導く
 今回、対象となる厳格化措置は、韓国を旧ホワイト国から除外することと、三品目(フッ化ポリイミド・レジスト・フッ化水素)を包括許可対象から除外すること(結果として、個別許可対象となる)の二点だった。とりわけ即効性が予想されたのは後者の方で、韓国の輸入量が少なくないことからグローバル・サプライチェーンに影響すると韓国で大騒ぎとなった。確かに、当該品目における日本企業のシェアが高く、他に代替がききにくいものだったため(そのような品目を選んだのだ)、効果てきめんで言わば急所を突いた形となったが、実際には、例えば最初の二品目は貿易統計(通関実績)上はそれなりのボリュームがあっても、輸出管理の対象となるのはその内の限られた仕様で極めて限定的であり(ほんの数%)、しかも手続きが煩雑となるだけで、例えば三つ目の品目は既に許可がおりて問題なく輸出されており、一説によれば、ここ数ヶ月、中国向け半導体輸出が減っていたので在庫がだぶついていたこともあって、実害はないという意味では、急所を突いたとは言え寸止めされていたと言える。実際に、韓国の康京和外交部長官も、最近の国会の決算特別委員会の全体会議で、日本の輸出管理措置について「具体的な被害は確認されていない」「このような状況が長期化することによる不確実性が企業の負担となる」と述べたという(8日付KBS記事)。従い、日本国政府の本音を代弁すれば、この厳格化措置で狙ったのは上記(1)の「シグナル」つまり「警告」に過ぎないのであって、輸出「規制」でもなければ、ましてや「禁輸」でもない。当初、安倍首相や経産大臣が徴用工問題とリンクするかのようにうっかり口を滑らせたのは、そのためだろうと思われる。ところが韓国側は(5)の「強制」と受け止めて反発した。日本側の意図が正しく伝わらなかったのは、日本側の説明不足と言うよりも、如何に説明されようとも政治利用しようと待ち構えていた韓国側の作為と言うべきだろう。正確に言うと、その筋の専門家(例えば韓国側の規制官庁)は正しく理解していただろうに、韓国大統領府が聞く耳を持たなかった可能性が高い。それはちょうど韓国の国防筋も情報筋も外交筋もGSOMIA継続を主張したのに、韓国大統領府が受け入れなかったとされるのと同じ構図で、イデオロギーに凝り固まった文大統領府の独裁と言うべきだろう。
 これじゃあ日本政府としてまともに相手をしていられるかぁ・・・ということになる。
コメント
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