風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

バイデン劇場の幕開け

2021-01-27 23:30:15 | 時事放談
 2009年、日本の旧・民主党が、「政権交代。」が目的で政権運営には見るところがなかったのと同様、バイデン政権も「反トランプ」が目的で政権運営には余り期待できそうにないかも知れない。なにしろ、右からのトランプ支持勢力に忖度しつつ、身内の民主党左派からの圧力をもかわさなければならないのだから。いや、トランプ政権のように単独行動主義に突っ走るより、国際協調的であることを世界の誰もが期待するが、アメリカにかつての体力があるわけではなし、既にオバマさんは世界の警察官を降りることを宣言している。そうは言っても、当の中国だけでなく台湾も日本も、バイデン政権の対中政策の成り行きに注目している。果たしてトランプ政権の強硬外交が引き継がれるのか、それとも次男坊の中国コネクションにまつわる弱みを握られていると噂されるのが本当で、宥和するのか。
 そんなバイデン政権の先行きを見極めようとするかのように、中国は、1月6日、香港で50名を超える民主派の立法会議員や反体制活動家らを逮捕し、1月20日、わざわざ米国東部時間正午過ぎを狙って、台湾の防空識別圏に偵察機を飛ばして、牽制した(その後も、23、24両日に中国軍機28機も同圏に侵入させた)。
 実際、バイデン政権を支える閣僚候補者たちはオバマ政権時代に要職を務めた、言わばバイデン副大統領(当時)の子飼いで、「第三次オバマ政権」だとか「お友達内閣」などとどこかで聞いたような言い回しで、揶揄される。アジア・ピボット(後にリバランス)を言い出したのはよかったが、何ら成果はなかった。勿論、当時と比べれば、中国の国力は一段と強力に、その対外姿勢は一段と強硬になり、コロナ禍の影響で、欧米諸国が足踏みする一方で、一足先に経済復興したとされる中国経済がアメリカにキャッチアップする時期が早まったとも言われる。オバマ政権当時と同じ対応であろうはずがない、というわけだ。
 そんな中、サキ米大統領報道官が記者会見で、対中政策について「中国への対応は過去数カ月と同じだ」と語りつつ、「いくらかの戦略的忍耐を持ちながら臨みたい」と述べたことが物議を醸している。「戦略的忍耐」と言えば、オバマ政権が北朝鮮に対して示した弱腰姿勢を想起させ、結果的に手を拱いて状況が悪化しただけの悪しき記憶が蘇る。今回は果たしてどうなのか。
 日本では専らバイデンさんの個人的資質を捉えて、中国に対して「弱腰」だとか、そもそも「決断力がない」だとか、外交経験は豊富だが成功した試しがないなどと遠慮会釈のない、手厳しい批判が浴びせられる。しかし、今となっては、こと中国との関係では、バイデンさん個人と言うよりも、日本でも報道されたことがあるが余り注目されることがない、“CPD”という組織の存在がポイントではないかと思う。
 これは、Committee on the Present Dangerの略で、日本語に訳せば「足元の危機に対処する委員会」と、いまひとつ迫力に欠ける悠長さを感じてしまうが、常設の機関ではない。最初に結成されたのは1950年で、対ソ戦略を担当し、封じ込めで著名なジョージ・ケナン氏も関係していた。アイゼンハワー政権でいったん解散したが、1976年に復活し、1991年にソ連が崩壊するまで対ソ強硬策を展開した。三度目は2004年で、テロ対策を担当した。そして2019年3月に四度目の復活を果たし、超党派かつ官民融合の組織で、中国の軍拡や情報戦対策、サイバー攻撃対策など、覇権争いに備えた戦略策定に従事すると言われる。日本人の私たちにはピンと来ないが、ここぞというときのアメリカの底力は侮れない。
 サキ米大統領報道官の発言は、既に中国関係者も見切っているように、当面はコロナ禍対策と国内経済復興にフォーカスし、対外政策は後回しになってしまうことの言い訳ではないかと思う(中国関係者は秋ぐらいまでは大した進展がないのではないかと見る)。このあたりは、トランプ政権が見境もなく単独行動的に制裁を繰り出して中国を追い込んで行った、余りに鮮烈な記憶が残るだけに(だからこそ中国は日米分断を狙って日本に秋波を送ったりしたわけで、私はトランプ政権の予測不可能な大胆さに驚きつつ内心は拍手喝采していた 笑)、日本としても注視しないではいられない。その高齢から一期しかないと言われ、時間との闘いになるバイデン劇場は、果たして魅せてくれるのだろうか。
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