風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

台湾の自由パイナップル

2021-03-05 23:21:12 | 時事放談
 以前、「豪州産ワインを飲もう!」と題して、中国がエコノミック・ステイトクラフトの一環で、つまりは嫌がらせで、豪州産ワインに反ダンピング関税を適用する方針を決定したことを本ブログで批判したが、今回は台湾産パイナップルの話である。以前、台湾はその豪州の「自由ワイン」を支持する呼びかけに加わったそうで、今回、台湾は自らの「自由パイナップル」に同様の支援が欲しいと呼びかけた。中国は表向き、昨年来、台湾産農産物からさまざまな有害生物が発見されたために輸入を停止したと言ったらしいが、台湾は対処済みとして、反発している。台湾・民進党の支持基盤には農業従事者が多いため、嫌がらせをしているのだろうと言う。
 折しも数日前の日経に、The Economist誌の「中国の『いじめ』への対処法」という記事が掲載された。中国に前触れもなく輸入を禁じられて打撃を被った例としては豪州が有名で、ワインのほかにロブスター、石炭、大麦、砂糖、木材、銅鉱石がある(なお、鉄鉱石は中国の必需品として対象外・・・とは現金なものだ 笑)。また、スウェーデン(同国籍をもつ香港書店経営者が反中書籍を販売)、カナダ(華為副会長兼CFOで創業者娘を逮捕)、ノルウェー(チベットのダライ・ラマ14世にノーベル平和賞を授与)、韓国(THAAD配備)も挙げられている。いずれも中国に経済的に依存するという弱みをもつ中小国が対象になっている。この記事によれば、東南アジアのある政治家は、「中国は各国に、単に中国の利益を考慮するだけではなく、積極的に忖度して、それに従うことを求めている」と指摘し、「十分に従わない国は行動を『改める』までいじめ続ける」という。まるで古代以来の中華帝国のメンタリティであり行動パターンのようだ。こうした威圧外交で勝利した例として、この記事は意外なことに日本を取り上げている。尖閣海域での漁船・船長逮捕事件に絡めて、レアアース輸出を制限されたときのことで、記事は、「米国やEUを巻き込み(WTO:世界貿易機関に)共同提訴したことが、その後の中国の譲歩に繋がった大きな要因」と解説するが、ほかにも、そのとき日本企業は代替品を開発したため中国のレアアース企業に打撃を与えたことが知られている。いずれにしても、この記事は、豪シンクタンク研究者の言葉を引用して、「同じ立場の国が団結して中国の横暴に対抗していくこと」が重要だと指摘するとともに、「だが豪州政府と韓国政府は、少なくとも中国政府の機嫌をわざわざ損ねるようなことはまずしないはずだ。ましてや自国企業に突出した強みがなく、中国に制裁を下されたら対応しようがない小さな貧しい国々は、中国には忖度の度合いを深めざるをえない」とちょっと悲観的に結んでいる。
 なお、米中対立による経済安全保障の時代を生き抜くための日本の軸を提供するコンセプトとして、「戦略的不可欠性」が重要だと、村山裕三・同志社大学教授は主張される。これは、「日本が他国から見て決定的に重要な領域において代替困難なポジションを確保すべきとする考え方」(Voice2月号)で、技術分野に限らず、企業の存在が「米中両国から見て戦略的に不可欠ならば、その企業が成長できる道が開ける」(同)し、場合によっては「日本が外圧に抗する力を得ることにもなる」(同)と言う。自民党が12月に経済安全保障戦略策定を政府に提言したときには、この「戦略的不可欠性」とともに「戦略的自律性」をキーワードとして挙げていた。少なくとも、中国のような意地悪な国にサプライチェーンを依存し過ぎないことが重要であろう。ついでながら、「戦略的自律性(Strategic Autonomy)」は、EUが、トランプ政権の4年間でないがしろにされたがために、やむを得ず打ち出したコンセプトでもある。
 閑話休題。台湾の自由パイナップルに話を戻すと、一昨日のNewsweek電子版によれば、「台湾から輸出されるパイナップルのほぼすべてが中国向けで、台湾の年間産出量41~43万トンの約10%を占め」ており、「昨年は4万1000トン以上が中国に輸出された」そうだが、中国政府の通知(2/26付)から僅か4日間で、4万1687トンについて、日本を含め台湾内外で買い手がついたということだ。めでたし、めでたし。自由・民主主義諸国が連帯し、そんな意地悪をしても無駄やと中国に分からせることが重要だろう。
 台湾土産で私のお気に入りは、鳳梨酥(パイナップル・ケーキ)。日本でパイナップルが安くなるとよかったのだけど(なかなかそういうわけには行かんな・・・台湾産パイナップルはフィリピン産より甘くて高価格らしい)。
コメント
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