風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

トランプ氏大勝

2024-11-07 23:45:15 | 時事放談

 政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の各種世論調査のまとめによると、投票前日の夜時点の全米平均支持率は、ハリス氏48.7%、トランプ氏48.6%とほぼ互角、激戦州でもそれぞれ僅差で競うという、史上稀にみる大接戦で、開票作業には数日かかると見られていたのに、実際に全てが判明したわけでもないのに、その日の内にトランプ氏の当選が決まったということは、トランプ氏「圧勝」の報道には違和感を覚えたが、「大勝」だったのは間違いない。大統領経験者が返り咲きを果たすのは19世紀のクリーブランド以来132年ぶりで、史上2人目だそうだから、快挙ではあろう。

 トランプ氏が来年1月20日に第47代大統領の就任式を迎えるとは・・・悪夢だ(笑)。いや、トランプ氏にしてもカマラ・ハリス女史にしても、どちらの候補が勝つのも現実問題として想像し辛く、受け止め辛いという、なんとも不思議な選挙だった。やはり選挙は蓋を開けてみなければ分からない。有権者にとっては何だかんだ言って目先の経済が重要で、バイデン政権下の物価高が民主党への不信任に繋がった可能性が高い。ハリス女史は、バイデン氏に代わる民主党候補として、トランプ氏よりも若く、トランプ氏のようなウソ・ハッタリや大言壮語はなく、女性で非白人のマイノリティとして、一時的に盛り上がったが、そもそも副大統領職は存在感が薄い上に、長期にわたる予備選挙を勝ち抜いたわけではないので、何を目指すのか、人となりはどうか、品定めする時間が乏しく、結局、期待感なるメッキが剥げ落ちるように後退し、ガラスの天井と言うよりも大統領としての実務能力に疑問符がつくという側面があったような気がする。他方の二期目のトランプ氏にとって勝手知ったる政権人事で、もはや猛獣使いはいなくなる可能性がないではないが、それでもトランプ氏個人の偏執的な関心の在処や独特の国益観念はともかくとして、周辺を固める要職にはもう少し常識も国益もあるだろうという一縷の望みは期待出来るし、トランプ氏お得意の舌禍はあっても大統領の暴走を止める制度的な仕組みがないわけではない。また、共和党員の不在者投票が増えたとの報道があったから、TVコマーシャルなどの所謂空中戦だけでなく、アメリカ流ドブ板選挙で共和党が健闘したということでもあっただろう。

 得票数を見ると、今のところトランプ氏の約7200万票に達しハリス氏の約6700万票と、「圧勝」と言ってよいのか分からないが、2004年の大統領選で子・ブッシュ氏が勝利して以来、20年ぶりに共和党候補が民主党候補の得票数を上回る見通しだという意味では、やはり快挙と言うべきだろう。日本の衆院選で、民意はなんと移ろい易く、しかし、民意は実によく出来たもので、侮れないものだとも思うと、ブログに書いた。此度は、これがアメリカの民意なのだと認めないわけには行かないし、諦めるしかない。

 かねてイスラエルを支持しウクライナ戦争を「24時間で終わらせる」と豪語するトランプ大統領について、イスラエルのネタニヤフ首相やプーチン大統領はほくそ笑む一方、ウクライナのゼレンスキー大統領や西側首脳は頭を抱えているだろう。バイデン大統領はトランプ氏が大統領に就任する前に既に予算確保された60億ドル以上のウクライナ支援を執行しようとしている。習近平国家主席は予測不能を嫌いつつもディール出来るのではないかと期待しているかもしれない。韓国では、前任の文在寅氏が信頼されていなかっただけに、警戒し、慎重になっているだろう。金正恩総書記は、図に乗ってしっぺ返しを受けたことから、もはや夢見ることはないだろうし、ロシアと蜜月なのでさして期待していないと思いたいが、先月、かつての米朝首脳会談に同行した人物やアメリカ通を少なくとも2人立て続けに外交、防衛の要職に起用したらしく、トランプ氏を抱き込む隙をうかがっている可能性があると見る向きもある(二匹目のドジョウはいないと思うが、でも何しろトランプだからなあ)。そして日本にはもはや安倍元総理はいない。軍事オタクでリベラルな、何より慶応高校時代に体育会ゴルフ部に所属していたという石破さんは、果たしてトランプ氏とゴルフが出来る(すなわち懐に入り込める)だろうか。

 台湾有事が懸念される2027年を含む今後の4年間は、初代NATO事務総長だったイギリスのヘイスティングス・イスメイ陸軍大将がNATOのミッションを“to keep the Soviet Union out, the Americans in, and the Germans down”と語ったように(もっとも昨今は”to keep America in, Russia Down, and China out”などと言う人がいる)、“to keep Nobody out, the Americans in, and the Chinese down”を守ることが出来るかどうかがポイントだと思うのだが・・・

コメント
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