結局、先週のNY金は週初から5営業日続伸で週末の引値は2712.20ドルで約2週間ぶりの高値に。週足は前週末比142.10ドル、5.53%高の反発となった。
週足の上昇率としては今年に入り最大で、23年3月17日終了週の5.7%以来の高さとなった。当時は米地銀シリコン・バレー銀行(SVB)の経営破たんなど信用リスクの上昇を懸念する買いを集め上昇していた。
前週11月16日終了週の週足は、終値2570.10ドル、前週末比128.70ドル、4.6%安の3週続落で週足の下げ率としては、21年6月18日終了週の5.85%の下げ以来の規模だった。
この2週間のボラ(変動率)は20年以来か。
先週の大幅上昇の買い手掛かりは伝えられたようにウクライナ情勢の緊迫化だった。時系列的に双方のミサイル攻撃の応酬が伝えられ、それに反応した連日の上昇が結局5営業日続伸となった。
節目になったのが、21日ロシアのプーチン大統領が国営TVを通じ同日に、ウクライナの防衛企業を標的に新型弾道ミサイルを発射したと明らかにしたことだった。ウクライナによる長距離射程の米英提供のミサイルを使ったロシア国内の軍事基地への攻撃に対する対抗策だった。
米国防省は核弾頭も搭載できるものの今回は通常弾頭で発射されたとした。また、発射前にロシア側から米国に通知があったことも明らかにした。
ロシア側は「核」使用を連想させる弾道ミサイル発射に対する過度の反応を抑え、(核使用の)誤解を避けるために通告したと見られるが、欧州諸国全般に警戒感が一気に高まることになった。欧州全域を射程に収めることから、ウクライナ戦争がエスカレートしたとの印象を欧州の機関投資家に与えた。
果たして今後事態の進展はどうなるか。背景にあるのが米国でトランプ新政権誕生が確実になり、新政権がウクライナから手を引くための早期妥結に動くとの見方だ。ウクライナ側の焦りとそれに応える任期満了が迫るバイデン米政権の動きがある。つまり、事態は余程のことがない限りさらに深刻化することはないと思われる。
いずれにしても、日柄調整を経てNY金は本来の金融経済環境の見通しに沿った動きに戻ることになりそうだ。
足元で米経済の堅調さを示すデータの発表が続いている。
先週22日(金)にS&Pグローバルが発表した11月米PMI(購買担当者景気指数)速報値は55.3と、22年4月以来2年7カ月ぶりの高水準に達した。50が拡大と縮小の節目となる。米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ見通しとトランプ次期米政権による企業優遇策への期待が追い風となり数値を押し上げたとされる。10~12月期にも経済成長が加速している兆候と受け止められた。その一方で、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では利下げは見送りとの見方が増えることでNY金の売り手掛かりとなる。金融マクロという点では、NY金の上値を抑える要因となる。