11日に実施された初の記者会見を境に、トランプ次期大統領のメディアを通した発言が増えている。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューでは、大統領選に際しての選挙期間中、ロシアがサイバー攻撃を仕掛けたとしてオバマ大統領が制裁を課した件につき、テロの戦いなどについて「ロシアがもし米国を助けるならば、なぜ制裁を課するのか」と解除の検討を示唆した。この件は制裁発表直後に、無反応で実質的にオバマを無視した形のプーチンの行動を評価するようなツィートをしていたので、意外性はない。
「一つの中国という原則」について“向こうの対応次第で決める”というニュアンスで曖昧な発言をしているのもこれまでと同じ。もちろん中国サイドは、「一つの中国という原則は米中関係の政治的基礎であり、交渉の余地はない」とさっそく反論。どうするのかと多くが関心を示してきた「就任初日に中国を為替操作国として認定する」という話は、「やらない。まずは話をする」とあっさり撤回となったようだ。
またドイツのビルト紙とのインタビューでは、「ドイツ首相の難民政策は最悪の過ち」とし「米国は徹底的な国境での検査を導入する」とした。また「メキシコを拠点とするドイツ車は35%の関税に直面する」とも述べている。「英国のEU離脱は素晴らしい。他のEU諸国も追随する」ともした。フランス国民戦線のルペンにエールを送るような発言だ。
20日の就任演説は、事前原稿を用意してプロンプターを見ながらしゃべるという勝利演説と同じようなスタンスで行うと思われるので、波乱なく通過し、市場の評価が高まり“踊り場状態” のトランプ・ラリーの復活に期待する声も多いようだ。そうかも知れないが、就任後にツィートがどうなるかが問題だろう。政府としての方針が、一回のツィートで信任が揺らいだり、無用な混乱を招く可能性がここまでの経緯から考えられ、「止める」と宣言しないかぎり懸念事項として残る。メディアへの不信が選挙運動中からあり、ツイッターに傾斜したが、手軽に意思表明出来る内容の範囲をよほど絞りこまないと、単なる“舌禍事件”では済まない混乱を招きそうだ。