亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

好調なのか不調なのか

2012年10月16日 21時38分04秒 | 金市場
調整局面入りしたNY市場の金価格は週初めからあっさりと1750ドル割れとなり、節目突破でファンドの売りプログラムがヒット(発動)し、下げ幅を拡大した。1750割れの水準での買いも見られるが、力強さも見られず。米9月の小売売上高が3ヵ月連続のプラスとなり、売りのきっかけを提供したというより、ファンドが戦線を建て直し中でいわゆるポジション調整という内部要因主導の下げといえる。QE3 後の上げも、1800ドル突破ならず、今回の下げも、NYコメックスでのファンドの動きがつくっているもので、現物筋は様子見の構え。結局、QE3プレミアムは行って来いで剥がれることになった。厳密には剥がれていないが、9月13日以降の上昇分はきれいに同じだけ削ることになった。

それにしても米小売売上高は、9月が市場予想(プラス0.8%)を上回るプラス1.1%に加え8月分が速報値のプラス0.9%からプラス1.2%に上方修正されるなど、個人消費が堅調に推移していることが示された。その一方で、NY連銀が同日発表した10月の製造業の景況指数は、好不況の分岐点となるゼロを3ヵ月連続で下回るマイナス6.2という結果に。前月のマイナス10.41からは改善したものの市場予想のマイナス4.0は下回ることに。ある外銀の試算では全米の指数となるISM製造業景況指数に焼き直すとすると前月の49.5から47.7に落ちたことに相当するとしている。楽観できず未だ霧が深くなってきている状況といえ、小売りのデータが示す内容とは対極にあり、どっちが正しいのかという感じだ。

このように米国経済も規模が大きいゆえに触る場所によってまだまだ熱かったり、逆に冷えかかっていたり、冷えていたりということになる。一般には、2009年に一気に冷え切ったものを慌てて温めたことが功を奏し危機状態を脱し、いまは徐々に温まりつつあるという風に捉えられているわけだ。ところが、温める燃料が昨年の8月に切れ、かろうじて再調達をしたものの年末にかけてまた切れかかっており、また調達しなければならない現状が迫っている。これが連邦債務上限問題にあたる。

ところで小売売上高の伸びの背景に「iPhone5」発売の影響が少なからず反映されているとみられているが、ならば一巡するタイミングも迫ることになる。

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