リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

S.L. ヴァイス:メイキング・オブ・ミッシングパート(1)

2020年09月17日 18時56分41秒 | 音楽系
ヴァイスの重要な作品が収められていることで知られる大英図書館蔵のAdd MS 30387写本(ロンドン写本)には3曲のコンチェルトが伝えられています。これらのタイトルにはいずれもタイトルに「フラウト・トラヴェルソとリュートのための」という内容の文言がありますが、これらのコンチェルトはいわゆるイタリアン・コンチェルトではなく、それぞれの楽器が協奏的に掛け合うという意味でのコンチェルトです。ヴァイスと同時代および彼の次の世代の時代の作品にはこのようなスタイルがよく見られます。

3曲のコンチェルトはそれぞれ次のような作品です。
1.変ロ長調でヴァイス氏作の表題
2.変ロ長調でジギスモンド・ヴァイス作の表題
3.ヘ長調でS.L.ヴァイス作の表題

1.はロンドン写本では最終楽章の44小節以降がありません。これと同じ曲がドレスデン写本でリュート二重奏として伝えられていますが、こちらは最終楽章まですべて残っています。ただ残念なことにリュートのセカンド・パートは伝えられていません。

2のジギスモンド(ジギスムント)はヴァイスの弟で、1690年頃の生まれで1737年に没しています。

今回私が復元したのは、3.のフルートパートです。3.を選んだのは、はっきりとS.L.ヴァイスと書かれているからで、1もひょっとしたらS.L.ヴァイスではない可能性があるからです。

この曲の復元パートは2016年にヴァイオリン用として作りました。その後本来のフルート用も作成しましたが、今回10月のコンサートで演奏するためにヴァイオリン用のものを何か所か書き直しました。今回ブログでご紹介していくのは、この「新訂」ヴァイオリンパートです。(もちろんリュートパートも紹介していきますが)なおヴァイオリン版とフルート版は音域の調整があるだけで基本的には同じものです。

それでは次回は第1楽章のご紹介となります。