リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

バロックリュート奏法の歴史的根拠と実践(5)

2022年11月06日 13時09分49秒 | 音楽系
右手指使いの実際を見てみましょう。

ヴァイスのソナタ第49番の最終曲プレストの冒頭です。ドレスデン写本にある曲ですが、テレマンの「忠実な音楽の師」という曲集にヴァイスが提供した楽曲でもあります。


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この曲の始まりを、上声のメロディを中指・人差し指・中指・人差し指(以下中人と略)で弾く人はまずいないと思います。私は図のように弾いています。

すなわち最初は人中で、2小節目冒頭のスラーをはさんで3つ目の音から中人に転じます。このようにこの曲では基本的中人ですが、フレーズによっては人中になります。そしてその転換点にスラーを上手く組み入れています。

こうすることで逆指をできるだけ避けるわけです。でも私は6,7小節のように1音ずつ弦を変えて弾くアルペジオになっているところでは、薬指や親指を使わず図のような逆指も混ぜて弾いています。薬指をあまり混ぜすぎるともたつきやすくなる感じがします。薬指は時々弦が飛ぶときに補助的に使うといいと思います。

12小節目のフレーズは2拍目の最後の音と3拍目の最初の音が連続中指になっていますが、1,2拍目と3、4拍目がエコーになっていますので運指上の問題が音楽に影響することはないと思います。むしろエコーの区切りを作るために連続指にしたます。

13小節~15小節のフレーズは左手も含めてちょっと弾きにくいところです。右手は親指を交えて、左手はバレをうまく使うと比較的合理的に弾くことができます。

この曲に関しては以上の運指パターンで大体収まりますのでとてもリュート・フレンドリーだと思いますが、まぁヴァイス作品なので当然そうなるでしょう。でも速く弾くのはなかなか大変です。