リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

バロックリュート奏法の歴史的根拠と実践(3)

2022年11月04日 12時23分23秒 | 音楽系
2つの音が重なっている場合、その2つの音をどう弾くかについて前出のブサールの理論書には次の記述もあります。


・・・もし1つより(弾くコース)が多いのなら次のルールを守ってください。すなわち、隣接している2つのコースの場合は親指と人差し指で、もし2つのコースが離れていてその間に1つか2つのコースがあるのなら、親指と中指で、・・・


この方法だと、メロディの始まりは中指、次の音(裏拍)は人差し指になるわけです。ただブサールは2音が隣接弦だと人差し指と親指で弾くように書いていますが、これはあくまでルネサンス・リュートの話で、バロック・リュートの場合はこのルールを当てはめない方がいいかも知れません。というのは、バロック・リュートの曲はルネサンス・リュート曲よりバスが多く、2音が隣接弦であったときのみ上声部を人差し指で弾くのはあまり合理的でないと思われるからです。まぁケースバイケースみたいなところもありますが。

またバロック・リュートの場合は2つのコースが離れている場合、例えば13コースのバスに対して1コースでメロディを弾くような場合は、薬指を使うと弾きやすくなるときがありますので、バラールの記述にあまり振り回されないようにした方がいいようです。昔の理論書の内容は心の隅において・・・みたいなスタンスですがかと言ってあまり拡大解釈しないよう心得えることも必要です。