リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

バロック・リュート奏法の歴史的根拠と実践(11)

2022年11月17日 10時41分11秒 | 音楽系
前回はルネッサンス・リュートの技術に寄り道してしまいましたが、バロック・リュートの技術に戻り、連載(9)の2.について見てみましょう。


2.ヴァイスの曲に右手薬指を使うという指示はひとつもない


この文は、ヴァイスの曲には中指人差し指の指示はあるが薬指の指示はない、従ってヴァイスの曲で薬指を使って弾くのは歴史的にみて間違いである、と取れますが、さて?

そもそもヴァイスの曲(に限らず当時の楽曲)に左右の指使いの指示はほとんど書かれていません。つまり別に薬指の指示もないし、他の指の指示も特にないのです。薬指のことだけ強調して言うということは、ヴァイスや同時代の楽曲をバロック・リュートで弾くときは薬指は全く使わないと取ってしまいます。

でもねぇ、こんないい加減なことを知らない人に言っていけません。まぁ受け取った人が聞き間違いしたのかも知れませんが。

ということなので2.に関しては誤り、または言ってもあまり意味のないことだと言えますが、せっかくですので当時のタブで薬指を使う指示がないわけではないので、みてみましょう。