リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

バロック・リュート奏法の歴史的根拠と実践(17)

2022年11月29日 18時12分01秒 | 音楽系
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現代のプロ奏者でこのポジションは少ないと思います。多くはもっとブリッジよりとかあまり位置を固定しないという方法をとっています。

今回はここから:

これはプロ奏者は合成樹脂弦を使うケースが多いからそうなるのだ。つまり(1)合成樹脂弦を張ってブリッジ近くで弾いたのでは綺麗な音がでないからだ。しかし昔は(2)ガット弦を使っていたのでブリッジ寄りで弾いても綺麗に音が出るのだ、などとよく言われます。

しかし(1)(2)の2つとも正確ではないかも知れません。プロ奏者には綺麗な音を出し、いい表現をするためにそういう方法(合成樹脂弦+ブリッジから離れた弾弦)をとる人がいます。でも合成樹脂弦+ブリッジ寄り弾弦でも綺麗な音は出せます。

また(2)のようにガット弦を張ってブリッジ寄りで弾いたら即綺麗な音が出るわけではありません。そういう方法をとって汚い音を出している人はいくらでもいます。

ガット弦+ブリッジ近くでの弾弦(あるいはガット弦のみ)にこだわる人がいますが(アマチュアの人に多い感じがします)バイアスをかけずに自分の出している音をしっかり聴いてみる、あるいはバイアスのかかっていない人で率直なに聴いてもらうといいと思います。でもリュートというだけでバイアスがかかってしまうので、難しいところですが。

いい音が出ていないのなら、その方法で綺麗な音をめざすか、弾弦位置や弦も合成樹脂に変えたりして別の方法も試すべきです。ガット弦+ブリッジ近くの弾弦ということだけで止まってしまい、そこから先のいい音いい表現をめざさない、あるいはガット弦+ブリッジから離れた弾弦で汚い音が出ているのに、合成樹脂弦を否定してガット弦にこだわるなどというのは教条主義に陥っていると言っていいでしょう。方法論にこだわるのではなくよく練習していい音楽を奏でることが大切です。