リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

バロック・リュート奏法の歴史的根拠と実践(9)

2022年11月15日 17時18分58秒 | 音楽系
少し前の話題に戻って、右手薬指の使用について書いてみたいと思います。といいますのも実は私の生徒さんから次のようなことを言っている人がいると聞いたからです。

1.ルネサンス時代には右手薬指はつかわない
2.ヴァイスの曲に右手薬指を使うという指示はひとつもない

ある有名なプロの方が断言されていたことで、絶対的なものと捉えているみたいだということでした。

このシリーズでは、歴史的なことはきちん踏まえたうえで、なおかつ教条主義的にならないように、というスタンスが大切だということをお話しました。そもそも歴史的資料は全ての時代および全ての奏者(流派)の奏法を完全に伝えるほど多くは残されていないからです。それでいくと上記1.2.歴史的認識も踏まえていないし、かつ教条主義的になっているという点であまりよろしくはありません。もっともこの状況は私は伝え聞いたにすぎないので、実はきちんとわかっていらっしゃるのかもしれませんが。

ともあれ、まず1について見てみると、ずばり右手薬指の使用を明示している人がいました。トマス・ロビンソンがその人です。彼が1603年にロンドンで出版しました「ザ・スクール・オブ・ミュージック」には右手薬指を使う例が出ています。

この本はタイトルで「リュート、パンドーラ、オルファリオン、ヴィオラ・ダ・ガンバの正しい指使い法を教える」と謳っています。

この本の表紙にはなかなか自信たっぷりな文言がならんでいます。訳してみますと;

-------------------
音楽道場

ここでは次のことを教えたり。すなわち次の楽器の正しい指使いの方法論、リュート、パンドーラ、オルファリオン、ヴィオラ・ダ・ガンバの。それらはもっとも間違いがなく標準化されたる規則で、簡潔かつ明解なものなり。

さらにリュートでもってプリック・ソングを師匠に習うことなく自習せしむる法も細に入り述べたり。またよりよく自習を深めるためにあらゆる種類の楽曲も添付せしものなり。

楽曲はリュート奏者トマス・ロビンソンが書き下ろしたり。
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次回は薬指を使用する例が掲載されているページをご紹介します。

バロック・リュート奏法の歴史的根拠と実践(9)

2022年11月15日 17時18分58秒 | 音楽系
少し前の話題に戻って、右手薬指の使用について書いてみたいと思います。といいますのも実は私の生徒さんから次のようなことを言っている人がいると聞いたからです。

1.ルネサンス時代には右手薬指はつかわない
2.ヴァイスの曲に右手薬指を使うという指示はひとつもない

ある有名なプロの方が断言されていたことで、絶対的なものと捉えているみたいだということでした。

このシリーズでは、歴史的なことはきちん踏まえたうえで、なおかつ教条主義的にならないように、というスタンスが大切だということをお話しました。そもそも歴史的資料は全ての時代および全ての奏者(流派)の奏法を完全に伝えるほど多くは残されていないからです。それでいくと上記1.2.歴史的認識も踏まえていないし、かつ教条主義的になっているという点であまりよろしくはありません。もっともこの状況は私は伝え聞いたにすぎないので、実はきちんとわかっていらっしゃるのかもしれませんが。

ともあれ、まず1について見てみると、ずばり右手薬指の使用を明示している人がいました。トマス・ロビンソンがその人です。彼が1603年にロンドンで出版しました「ザ・スクール・オブ・ミュージック」には右手薬指を使う例が出ています。

この本はタイトルで「リュート、パンドーラ、オルファリオン、ヴィオラ・ダ・ガンバの正しい指使い法を教える」と謳っています。

この本の表紙にはなかなか自信たっぷりな文言がならんでいます。訳してみますと;

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音楽道場

ここでは次のことを教えたり。すなわち次の楽器の正しい指使いの方法論、リュート、パンドーラ、オルファリオン、ヴィオラ・ダ・ガンバの。それらはもっとも間違いがなく標準化された規則で、簡潔かつ明解なものなり。

さらにリュートでもってプリック・ソングを師匠に習うことなく自習せしむる法も細に入り述べたり。またよりよく自習を深めるためにあらゆる種類の楽曲も添付せしものなり。

楽曲はリュート奏者トマス・ロビンソンが書き下ろしたり。
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次回は薬指を使用する例が掲載されているページをご紹介します。