リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

バロック・リュート奏法の歴史的根拠と実践(8)

2022年11月12日 14時40分40秒 | 音楽系
バッハが五線譜で示した装飾記号の解題はとてもよく知られています。



この示されている音符を均等割で弾けばオーケーではありません。沢山書かれている細かい音符は音楽の流れに沿って微妙に長さが異なるように弾くべきです。といってあからさまに音の長さを変えるというわけではありませんが。

50年くらい前、何人かのピアニストによるバッハの装飾の弾き方はどんな場合もほぼ「等速」だったように記憶しています。でした。まるでフリーデマンのための音楽帖の表をそのままコンピュータに入力して機械的に弾いているようでした。装飾の弾き方はほぼ等速からいくつかの音を長めに弾くといった幅があるべきです。

ですから、リュートの「コンマ様の装飾記号」に戻りますが、どう1回弾くか、どう2回弾くか・・・こそが重要なのです。1回、2回・・・弾けばいいというものではありません。この記号が多義的であるというのを知っている(つまり知識レベル)のは習得レベルとしては1%くらいに過ぎません。知っていても弾けなければ何にもならないのです。

ブサールはいい言葉を残しています。


・・・残念ながらそれら(装飾音の弾き方に関するルール)は口で言ったり書いたりして表すことができない、・・・上手な人の真似をするか、自ら練習を重ねて習得するのが一番いい方法になるでしょう。・・・(VARIETIE OF LUTE-lessons)