Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

私の先生

2012年08月24日 | バリ
 70歳に手が届いたグンデル奏者は、私の師匠の一人である。1980年代からグンデル・ワヤンのリーダーとして演奏をになってきたが、残念なことに今なおリーダーであり続けている。要するに、リーダーになりえる後継者がいないのである。
 70を過ぎた今も、畑仕事やさまざまな工事に汗を流し、若い人々とともに働く先生だが、やはりそんな姿を見ると痛々しく感じる。そうしなければ食べていけないという現実を私は知っているからだ。しかしだからといって私に何ができるだろう?
 歳を重ねたバリの演奏者には誰にだって言えることだろうが、楽器の撥を持った瞬間、その表情がかわり、背筋が伸びる。もうその瞬間、別人になる。「格好いい」というのはスタイルが良くて、似合ったおしゃれな服を身につけた人ばかりに当てはまる言葉ではない。こんな「じいじい」はぼくには、限りなく凛々しく格好よく見える。
 自分もいつかこうありたいと思う。誰もが歳をとっていくものだ。しかし歳を重ねるほど、その演奏や上演に磨きがかかり、若い学生や教え子たちに「格好いい」といわれれば、それはもう本望である。「格好いい」は、その奏でる音や演技が醸し出す雰囲気なのであって、外見だけの「格好よさ」などとは比べ物にならないほど「いけてる」のである。