Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

儀礼の空

2012年08月25日 | バリ
 儀礼の調査をしていると、そこで行われている儀礼的行為に集中する。僧侶が次にどんな行為を行うのか、どこでどのような芸能が上演されているのかなどなど、儀礼空間で行われているそんな行為を記録したり、メモしたりする。だから当たり前だが、それとは無関係な(何の儀礼も行われていない)、儀礼空間の真上に広がる空なんてまじまじと見ることはない。だいたいそんなことをすれば、大事な儀礼を見落としてしまうし、調査の放棄であるからだ。
 ぼくは昨日、ちょうど仮面舞踊が終わって儀礼がブレイクしたそんな瞬間、カメラのファインダーを儀礼空間の上にまっすぐ向けてみた。別に意図的にやったわけでもなく、なぜ、その時、とんでもない方向にファインダーを向けたのか、正直なところ記憶にないのである。
 儀礼とは全く違う空間が広がっていたことに気がついた。儀礼空間の騒々しいサウンドスケープとは無関係な静かな空間。ゆっくりと風が東から西へ流れて、飾り物がゆるやかにたなびく。こんな空も観客で、儀礼を見つめていたんだな、とあらためて感じる。そう思ったら、緊張が緩んでなんとなくホッとした。そんな当たり前なことに気がつかなかった30年。ちょっぴりぼくも成長したんだね。