社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「英米における医療従事者のための死生観教育」Carl Becker

2010-10-04 10:26:52 | その他
諸外国における、医師・看護師養成課程における死生観教育の取り組みを紹介している。
すでに出版されている書物からの抜粋ということもあり、読みやすく分かりやすい

引用
・英国の看護師教育では、1971年から正式な死生観教育のプログラムが導入された。アメリカでは、1975年度あたりから導入された。

・カナダやイギリスの看護学部における死生観教育の中心テーマ
①家族と患者の精神とコミュニケーション
②喪失感と負担の対応と治癒
③死に対する不安やスピリチュアルペイン
④死の間際にかかわる決定権や倫理的問題
⑤ホスピスと看護師の役割や責任、など

・カナダの電子通信教育(学部生に限らず、現役の医療従事者も対象)において取りあげられるカリキュラムの内容
①緩和ケアの複数モデルとそれらが前提とするコミュニケーション
②末期患者の家族の期待や精神的なニーズと、介護者自身のストレスとその対処法
③決定方法、自己決定と代理決定、尊厳死宣言や医療に対する希望の文字化
④家族内のコンフリクトの予測と予防、決定に関する和解など。医療チームの中のコンフリクトの予測と予防、協力態勢の支援法
⑤死にゆく子どもにまつわる特殊の問題。苦悶、喪失感、悲嘆などに対するカウンセリング
⑥他言語、他文化、他宗教や世界観に対する感受性。臓器提供、組織提供、献体、など


学部生と比較し、現役の医療者をも対象としたカリキュラムは、とても具体的で活用しやすいものが用意されている印象を受けた。
ソーシャルワーカーについては多く触れられていなかったが、以前見学をしたアメリカのホスピスのソーシャルワーカーによると、養成課程(特に大学院レベル)では、死生学について学ぶことは「普通」であると言っていた。

今後は日本でも、この側面の教育が期待されるであろう。それを学部レベルで終わらせず、定期的にトレーニングできるシステムがあってこそ、根付く学問であると思う。



緩和ケア 2010年 09月号 [雑誌]

青海社

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