社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「死別から共存への心理学 スピリチュアル・ペインとケア・カウンセリング」品川博二・赤水誓子(2005)

2010-12-15 10:37:54 | 心理学
 臨床心理士による書物。
ケア・カウンセリングという観点から、遺された人への支援について紹介している。学術的な論点よりも、筆者自身が実践で学び得たものを、論として組み立て紹介している印象が強い。

引用
「ケア・カウンセリング」とは?…看護者・介護者らをはじめ広くケアリングの臨床に携わる者が、援助者・被援助者の両者に「肯定的で相互的な人間関係」を構築するために活用するカウンセリングの理論と技術である。

スピリチュアル・ペインとは?…「今、ここで」のリアルな関係のなかでこの「相手の痛み」を感じ取ることである。(中略)相手を推論や分析で対象化し、能動的に把握することではない。それは受動的な「訪れ」としか言いようのない、自己の内側から沸き起こるパッション(苦痛)である。肉体によって分けられる自他の境界を超えて、「相手の痛み」が「我が痛み」として融合的に感知される、この関係的な体験様式をスピリチュアルと表現しているのである。

故人と残された方々との、「生と死を越えた関わり」の再構築に向かって、グリーフ・ワークは実践されるのである。



スピリチュアルペインは、未だ定義が確立されていないという状況のなかで、多方面の領域からの議論は大変意義深いと考える。臨床心理士である筆者は、スピリチュアルペインは、ひとが相手の痛みを感じることによって初めて生じるものだ、と説いている。これは私にとってはとても新鮮な考え方である一方、咀嚼しきれない解釈でもある。

ひとは一人では生きておらず、親族や近隣のひと、そして援助者と呼ばれる社会資源とともに生活をしている。しかし例えば、そのひとが長く単身生活をしていて、実は生き別れた子供がいたとして、「最期に会いたい」と切望している…でも会えない状況にある。これが私の理解では、すでにスピリチュアルペインになるのだが、筆者の解釈に照合すると、「こどもが生き別れた親を憎んでいる。もしくは会いたいと思っている。と、死にゆくひとが感じ取っている」ところまでいくとスピリチュアルペインになるようだ。

スピリチュアルは、やはり奥深い…。


死別から共存への心理学―スピリチュアル・ペインとケア・カウンセリング
品川 博二,赤水 誓子
関西看護出版


コメント
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