社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「訪問看護師に対する遺族の怒り」 小林尚司 (2010)

2011-08-06 14:07:01 | 看護学
『日本赤十字豊田看護大学紀要』5巻1号

在宅介護の末、在宅で義母を看取った親族に対する面接調査を通して、悲哀に伴う医療者への怒りの原因を追求している。
看取り後の遺族のこころの葛藤を垣間見ることができ、訪問看護師ならずとも、すべての医療者に通じる内容となっている。

引用
・面接調査中の対象者の言葉⇒
「(病院の看護師さんと訪問看護師とは)距離が全然違う。本当に近いですよ。病院の看護師さんが1キロくらい離れているとしたら、在宅では1メートルくらい」
(看取り後に)「ちゃんとやったよって。まあ証人じゃないですけど、そういうのが欲しかったのかもしれない。」

・死別後のサポートとして期待していること…「悲哀の理解」「介護の承認」。サポートに満足していると、援助者に対して【肯定的な意味付け】として「過去の関わりの意義を再確認」「信頼の深まり」につながり、サポートに不満があると、【否定的な意味付け】として「過去の関わりを悪く解釈」「信頼に対する裏切り」につながる。

・死別の悲哀や介護への自責の念といった苦痛においても、訪問看護師への期待が大きいことが示された。



衝撃的なタイトルの論文である。
1事例からの報告であるため、一般化は難しいであろうが、遺族のこころの経過を丁寧に綴っている。

在宅は患者・家族にとっては、生活の多くを見せているため、必然的に気持ちの距離も近くなる。
それゆえに「これくらいは理解してくれているだろう」という期待感を沸かせ、それが実現されなかったときには、怒りにつながるのかもしれない。
ビジネスとしての援助には、ある一線があり、それによって冷静で公平なケアを提供できている側面がある。
利用者の想いに過不足なく寄り添う時に、真の「プロ」としての姿勢が問われると痛感した。

コメント (2)
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