社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「ひきこもりでいいみたい 私と彼らのものがたり」芦沢茂喜(2018)

2018-08-28 11:39:52 | 社会福祉学
 山梨県で支援を続ける、精神保健福祉士さんの実践記録。
 年齢別での特徴や関わり方の特徴、段階別での関わりの特徴を中心に、いわゆるHOW TOの事柄、現状と課題といった学術的な部分とを兼ね揃えている。
 学術的な要素がありながらも、難しい表現では書かれていない専門書であると感じた。

引用
・「ひきこもり」は本人達が選択した行為であり、こちらから無理やり関わる必要ななく、待っていれば良いという話を聞くことがあります。無理やり関わることは良くないことであり、待つことも大切であると私も思います。ただ、「ひきこもり」が選択した行為かといえば、違うように思います。選択という場合、そこには複数の選択肢が提示されている必要があります。彼らに複数の選択肢が提示されていたのかといえば、「学校に行く(就職する)」か「ひきこもる」かの二者択一であり、学校に行けない、就職できないのであれば、ひきこもりしか選べなかった人が多いように思います。
・私は。支援における目標を決めません。目標はゴールになります。ゴールとして就労や自立などをあげる人がいるかもしれません。確かに就労や自立は大事なことです。ただ、社会では大事だとされることが、私が関わる一人ひとりに大事なのかは分かりません。


 筆者は私の学生時代のゼミ仲間であったため、とても「彼らしい切り口」に納得感を抱きつつ、こういうワーカーさんに出会えたら、楽に生きていけるな~としみじみと思った。
「支援にゴールは作らない」ことは、効率的な支援や公平性のある支援を重んじる今の社会においては(特に介護保険下のサービス)、逆行している考え方かもしれないし、それは専門職としての根拠が無いからだと叩かれるのかもしれない。
でも大事なのは、生きづらさを感じている当人(生きづらいだろうな~と心配している家族)や関わって欲しいなと求めている当人/家族との関係を続けていくことであり、その段階に適した距離感をどうとるか?なのかなと思った。
 本書に中で、「過去や未来ではなく、今を認めること」が重要視されていることが、私には特に印象に残った。

ひきこもりでいいみたい――私と彼らのものがたり
クリエーター情報なし
生活書院


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