社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

小児がん チーム医療とトータル・ケア 細谷亮太・真部淳 著(2008)中公新書

2009-01-18 13:52:43 | 医学
小児専門病院に勤務している友人から、「小児のがん告知は、ほとんどが本人抜きで行われている。10年前の成人への対応と似ていて、すごく意識が遅れている」と聞き、本書をひらいた。

疾病について、医療体制について、そして今後の在り方、諸外国の動向など、専門的でありながらも分かりやすい。ひろく一般の人にも読んでもらえるように…という筆者の意図が伝わる。

・3~5歳の子供は、まだ死の概念がはっきり認識されておらず、死の非可逆の理解も難しい。しかし年齢を重ねるにつれ、その理解はなされていき、通常思春期以降は、成人と同程度の理解ができるといわれている。
・緩和ケアをはじめるタイミング→治癒をめざした治療が難しいかもしれないという予感が生じたころから、自然にケアを主体とした医療に移るのが望ましい。


「緩和ケア=終末期医療の体制」ととらえられている。それが小児医療だからなのか、筆者のもつ定義なのかは分からないが、私はやはり、緩和ケアは終末期だけのものではないと感じる。
「痛みをとる」ことが緩和ケアとされているが、それはどの疾患であっても、どの年齢であっても、どの場所(医療機関)であっても行われていることだ。確かに、ガン性の疼痛は、ペイン専門医のかかわりの有無もしくは、痛みのコントロールの技術を持つ医師の有無で、その対応は雲泥の差であることはよく知られている。
そういった意味での「痛み」とするのか、疾患を抱え、生活をしていく上での様々な痛みをも含むのか…概念の整理がますます難しくなっているように思う。

小児患者は、在宅で終末期を迎えることは、まだまだ数が少ないとのこと。それは受け入れる体制が少ないことも、大きな要因となっていると指摘。
慢性期にある小児患者の主治医は、小児科医でなくても、一般内科医でも十分だという声を聞く。それでもやはり、受け手として、「小児」であるがゆえに特別視してしまう「何か」がある。
実践例が少ないがために、その対応方法が蓄積されていないからなのか…。

補足(初めて知ったこと)
「ムンテラ」の由来…「ムント(口)+テラピー(治療)」の造語で、「患者をうまく丸めこむ」という、よくない解釈が含まれている。

「チャイルドライフスペシャリスト」…苛酷な状況にある子供たちが、そのような環境が原因のトラウマをこうむることがないように支援する。例えば…遊びの中から病棟の子供たちにかかっているストレスを敏感に認識し、積極的にトラウマから護る方法を遊びに取り入れ、駆使する。病棟保育士や小児心理士と業務内容は似ているが、専門性に違いがある。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「愛」なき国  NHKスペシャ... | トップ | 「ケアのための空間」 三浦... »

コメントを投稿

医学」カテゴリの最新記事