社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「福島県県北地域 在宅緩和ケア地域連携パス作成と活用」 桑折千賀子ほか

2010-09-06 19:20:39 | その他
『地域連携 network』2010 3・4月号

福島県県北保健福祉事務所が中心となって取り組んだ、在宅緩和ケア連携パスの作成過程とパス内容の報告。
医師のみならず、看護師、ソーシャルワーカー、一般市民等が検討委員となり作成に関わっている。


通常用いられている、「情報提供書」や「看護サマリー」とは別に、パスの活用を試みている。活用している病院への聞き取り調査では、「分量が多すぎる」「情報提供書等と情報が重複している」等、デメリットも明らかになったとのこと。

ソーシャルワーカーの立場からみると(私のいた職場だけかもしれないが)、SW申し送り書のようなものを紹介元からいただくことはほとんどなく、情報提供書や看護サマリーを照合しながら情報を整理したり、電話で確認をしながら…ということが日常であった。そのため、情報を一見して得られるパスは、検討の余地はあれど、やはり切れ目のないケアの提供のためには、有効であると考える。

また紹介されているパスには、「グリーフケア」に関するものもある。
例えば紹介先からそれを受け取れば、「緩和ケアはグリーフケアも担うできものなのだ」という啓蒙にもつながり、また「何をどのように行っているのか」といった指標にもなるだろう。

2012年までには、一定の医療機関のみではあるが、がんの地域連携パスの運用が義務付けられる。作成にあたっては、医療者のみならず一般市民のの声も是非反映させて欲しいと思う。
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「がんと向き合って」上野創(2007)朝日文庫

2010-09-02 07:22:23 | その他
20代でがんを発症し、転移・再発を抱えながら社会復帰を遂げた新聞記者の闘病記。
告知を受ける側、無菌室にいる側、投与を受ける側の心理がつづられている。
がんという疾患のみならず、病院というハコのなかで闘病する生活者の記録として読むことで、病院のもつ空虚さを考えさせられた。

引用
・がん告知は、小さな配慮が、患者のショックを最小限のものにし、医者への信頼感を生むと思う。乱暴に告知し、アフターケアもなければ、ショックも不信も増すことだろう。(p.34)
・ベット以外、病院内に患者の居場所はほとんどない。一日中、他人と同じ空間にいて、パジャマ姿。思いきり笑えず、泣けず、満足に話もできない。元気を吸い取られ、ますます「病人」になってしまいそうで怖かった。(p.42)
・僕はもう少しそばにいてほしいと漠然と思っていた。医療行為とは別に、気持ちを楽にしてくれるケアを心の底で求めていたのだ。ただそれをどう伝えればいいのか、自分は具体的に何をしてほしいのか、自分でも分からなかった。(p.138)


嬉しくない知らせを聞いた後は、家族や友人と「どうしようか」「なぜなんだ」と気の済むまで話をしたり、大きな声で泣きたくなる。しかし病院では…特に大部屋は、それが許されない(できない)環境である。
私が子どもを出産した病院は第三次救急の大病院で、胎児の異常に対する「早期発見」「早期治療」を行っていた。「早期発見」されれば、医師からその「告知」を受け、部屋に戻る。戻った先では、声を押し殺して泣き、カーテンは数日締め切られたまま。その間、定時の確認以外に、医療者がたずねてくることはなかったように思う。…このような出来事が日常的に繰り返され、同じ病室の患者同士で情報交換をし励まし合い、それが精一杯であった。
なぜ「その後、どうですか?」とサポートに来れないのだろうか。そこにはソーシャルワーカーもいて、告知の場には同席していたという。

患者と医療者、援助者の壁は、ささいなことで巨大なものとなり、またささやかな配慮でフリーになるのだと、本書を読んで痛感した。



がんと向き合って (朝日文庫 う 13-1)
上野 創
朝日新聞社

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