「埼玉の民話と伝説」は武蔵野銀行が1977年に発行したもので、50話が載っています。
非売品なので手に入れることが難しいと思われますが、図書館で見つけ読んでみました。伝説が中心ですが、埼玉のお話という視点でみるとコンパクトにまとまった小冊子です。
昔、藤原秀郷と平将門が最後に戦ったという秩父。将門には七人の影武者がいたとか、侍女の桔梗に心がわりされて、斬首されたなど平将門にまつわる話や歌人として名高い西行法師が寄居町にやってきたときに、西行法師にたずねられた子どもや百姓の娘が見事な歌でこたえたことから、まだまだ自分の修行が足りなかったことを恥じた話。
さらに、浦和市の大門神社の境内にある愛宕神社の拝殿に彫刻されている龍、浦和市の国昌寺の龍、越谷の清蔵院の龍、入間郡の星宮神社の唐獅子、比企郡吉見の安楽寺の虎、大里郡妻沼の聖天社の猿などは左甚五郎作といわれていること(だれの作かわからないものに、左甚五郎作と伝えられたものもあるのではとの注釈あり)。
また栗橋町にお墓があるという静御前の最後や与野市の弘法大師などの話、在原業平が志木市にやってきたなど歴史上の人物があらわれます。
このなかには、秩父の武甲山と笹山に住む天狗が山の高さを競ったり、北本市の氷川神社の大杉、喜多院の鐘、坂戸の九頭竜神社など竜にまつわる話、さらに狭山市の河童、本庄市のカッパの壺、熊谷市のカッパの妙薬などカッパにまつわる話など伝説といいながら、多様な登場人物がでてきます。
埼玉のお話の原型を知るうえでよくまとまった冊子です。