四季の彩り秩父路の民話/市川栄一文・池原昭治絵/さきたま出版会/1984年
秩父の民話/市川栄一文・池原昭治絵/さきたま出版会/2007年
本の奥付をみると、作者は秩父で生まれ、小学校の先生を続けられながら埼玉県全域にわたる民話の採集・再話を続けられている方とある。
上記2冊のなかに札所の民話として
一番四萬部寺 読んだ仏典 四万部
三番常泉寺 子持ち石
四番金昌寺 酒好きな名主様の失敗
六番ト雲寺荻野堂 武甲山の山んば
八番西善寺 ご詠歌に節をつけた村人
九番明智寺 盲目の母
十番大慈寺 風格のある老僧
十一番常楽寺 即道坊が運んできた大石
十二番野坂寺 絹商人と山賊
十三番慈眼寺 賽銭箱に投げこんだ小判
十四番今宮坊 観音様のお姿の雲
十五番少林寺 疫病神の失敗
十七番常林寺 殿様を誡めた家来
十八番神門寺 昔は神社 今は寺
十九番龍石寺 天に昇った竜
二十番岩ノ上堂 観音様の渡し船
二十二番永福寺童子堂 犬になった息子
二十三番音楽寺 小鹿の道案内
二十七番大渕寺月影堂 秩父にやって来た弘法様
二十八番橋立堂 石になった悪竜
二十九番長泉院 竜女を見た男
三十番法雲寺 海を渡った観音様
三十一番観音院 はね返った矢
三十二番法性寺 笠をかぶった観音様
三十三番菊水寺 八人峠
三十四番水潜寺 百番巡礼を果たした法師
とほとんどの札所にかかる話が採集・再話されている。
秩父札所は1234年頃から1488年の札所番付(札所三十二番寺蔵)が実在することから今日まで何百年かたっている。秩父札所は一番四萬部寺から三十四番水潜寺までが一回りすると約100㎞ほど。
ところで観音霊場巡りは、仏教の(如来)釈迦如来、阿弥陀如来、(菩薩)文殊菩薩、地蔵菩薩、(明王)不動明王、愛染明王、(天部)毘沙門天、大黒天、弁財天など、たくさんの仏様のうち、その中でも、人気の高い観音様が祀られているお寺を巡礼し、信仰を深めたり、お願い事をしたりすることだという。
観音霊場は三十三の寺院で構成されていることがほとんどであるが、三十三とは、観音経において観音様が人々の悩みや苦しみを救済する為に三十三の姿に身を変えることからきているという。西国三十三所観音、坂東三十三所観音に秩父三十四所観音を合わせたものが日本百観音。このほかにも各地方に数多くの観音霊場があり、関東では武蔵野三十三ケ所、鎌倉三十三ケ所など北海道から九州まで41か所の観音霊場があるという。単純に計算すると札所は1300カ所を超えることになり、さらに観音様が三十三の姿に身を変えるということは、さらにその数倍の伝説があっても不思議ではなさそう。
「伝説」を辞書でひくと、「歴史上の人物や、具体的な事物・事件などに関する言い伝え」とあるが、何らかの脚色がおこなわれ、人々に語りつがれてきたものも多いのではないか。