日本の民話3 神々の物語/瀬川拓男・松谷みよ子・編/角川書店/1973年初版
一人暮らしの貧しい兄さが、嫁さをもらい、ようまあ働いた。
くりくりとよく働くものでだんだん暮らしもよくなってきた。
こうなると、もともとこの家に住み着いていた貧乏神が、どうも居心地が悪い。挙句の果てに泣き出す始末。
これを聞いた若夫婦が、わけをたずねると、貧乏神は「お前たちがよくかせぐので、おらここにいられなくなった。もうじき、ここさ福の神がくる。おらはもう出ていかねんばなんね。ほんでも行きたくねえしや」
という。
若夫婦は、これまで一緒にくらしていたので、でていくことはないという。そして福の神が来たら、追い出していいとはげます。
若夫婦は、貧乏神に腹いっぱい食わせたと。やがて福の神がやってきて、貧乏神と相撲の勝負。若夫婦の応援をもらった貧乏神は、福の神を投げ飛ばしてしまう。
福の神はたまげて逃げ出すが、打ち出の小槌をわすれてしまう。
貧乏神が「米でろ」「味噌でろ」「金も出ろ」と次々に叫ぶ。兄さも嫁こも「家でろ」「べべでろ」「倉でろ」と叫ぶと、それもでてくる。
すると貧乏神がいつのまにか、福の神になっておったと。
今のご時世、一生懸命働いても、なかなか暮らしが楽になるという実感がないが、たまには夢をみてもいいのでは?
貧しいときは、よく働いたが、こんな福がまい込むと、そのあとはどうなったか気になるところ。