どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

貧乏神と福の神

2015年11月21日 | 昔話(日本)

      日本の民話3 神々の物語/瀬川拓男・松谷みよ子・編/角川書店/1973年初版


 一人暮らしの貧しい兄さが、嫁さをもらい、ようまあ働いた。

 くりくりとよく働くものでだんだん暮らしもよくなってきた。

 こうなると、もともとこの家に住み着いていた貧乏神が、どうも居心地が悪い。挙句の果てに泣き出す始末。

 これを聞いた若夫婦が、わけをたずねると、貧乏神は「お前たちがよくかせぐので、おらここにいられなくなった。もうじき、ここさ福の神がくる。おらはもう出ていかねんばなんね。ほんでも行きたくねえしや」
という。

 若夫婦は、これまで一緒にくらしていたので、でていくことはないという。そして福の神が来たら、追い出していいとはげます。

 若夫婦は、貧乏神に腹いっぱい食わせたと。やがて福の神がやってきて、貧乏神と相撲の勝負。若夫婦の応援をもらった貧乏神は、福の神を投げ飛ばしてしまう。

 福の神はたまげて逃げ出すが、打ち出の小槌をわすれてしまう。

 貧乏神が「米でろ」「味噌でろ」「金も出ろ」と次々に叫ぶ。兄さも嫁こも「家でろ」「べべでろ」「倉でろ」と叫ぶと、それもでてくる。

 すると貧乏神がいつのまにか、福の神になっておったと。


 今のご時世、一生懸命働いても、なかなか暮らしが楽になるという実感がないが、たまには夢をみてもいいのでは?

 貧しいときは、よく働いたが、こんな福がまい込むと、そのあとはどうなったか気になるところ。