世界むかし話 東欧/松岡享子・訳/ほるぷ出版/1989年
いつもおばあちゃんから、だれがきても戸をあけないようにいわれていた小さな男の子ブドーリネク。というのもブドーリネクは森のそばの小さな家にすんでいて、おばあちゃんは毎日働きにでかけていたのです。
ある日、おばあさんはお昼ご飯にスープをつくってでかけました。そこへキツネのリュシュカがやってきて、戸を開けてくれたら、しっぽにのせてあげるといわれ、おもしろそうと、ブドーリネクは、おばあちゃんのいいつけをわすれて戸をあけました。するとリュシュカはテーブルの上のスープを、がつがつとぜんぶたいらげてしまいました。おかげでブドーリネクは、お昼になってもなんにもたべるものはありませんでした。
次の日、おばあちゃんは、おかゆをつくってでかけました。すると、またリュシュカかがやってきて、おかゆを一口でたいらげ、ブドーリネクをしっぽにのせてくれもしないで、走って帰ってしまいました。
おばあちゃんはブドーリネクの話をきいて、こんどいいつけをやぶったら、おまえのおしりをぶつからねと念を押し、次の日はお豆を煮てでかけました。そこへリュシュカがやってきて、なんどもなんども頼むので、とうとう戸をあけました。するとまたもやおはちに鼻を突っ込んでお豆を全部食べてしまいました。でもこんどはリュシュカは、ブドーリネクを、しっぽにのせてくれました。ところがつれていかれたのは森のなかの穴。ブドーリネクは、三びきの子ギツネと穴の中でいっしょにいなければなりませんでした。子ギツネたちは、ブドーリネクをからかったり、かんだりしました。ブドーリネクは、おばあちゃんのいいつけにそむいたことを後悔し、泣きました。
ある日、オルガンひきが森の穴をみつけました。オルガンひきは、おばあちゃんの話を聞いて、ブドーリネクをさがしにきたのです。
オルガンひきは、オルガンにあわせて小さい声でうたを、うたいました。
ふるギツネが一ぴき、二、三、四ひき、ブドーリネクをたすと、ぜんぶで五ひき。
リュシュカは、一番上の子ギツネに十円をわたし、オルガンひきにやるようにいいます。
一番上の子ギツネがオルガンひきに、十円をさしだし、どこかよそにいくようにいうと、オルガン引きは、子ギツネつねをつかまえて、袋のなかにほうりこみました。そして、またうたいだします。
ふるギツネが一ぴき、二、三ひき、ブドーリネクをたすと、ぜんぶで四ひき。
リュシュカが二番目の子ギツネに十円持たせて外にやると、二番目の子ギツネも、オルガンひきの袋のなかに。
ふるギツネが一ぴき、それから、もう一ひき、ブドーリネクをたすと、ぜんぶで三ひき。
うたをつづけて、穴にのこったのはブドーリネクだけ。
オルガンひきは、木の枝で、袋の上から、おもいっきり四ひきのキツネどもをぶちのめし、ブドーリネクをつれて、おばあちゃんのもとに帰りました。
オルガンひきがうたうと、数がだんだん減っていきます。
三度も同じ目にあったり、キツネに食べられてしまうのではないかハラハラし、最後はユーモアにおわるという安心?してきける昔話です。