どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

ネズミのてんぷら・・福岡

2023年06月03日 | 昔話(九州・沖縄)

         福岡のむかし話/福岡県民話研究会編/日本標準/1983年

 

 ネズミのてんぷら? これはこれは??

 直方の清徳というとんちのある商人が、てんぷら屋にもちかけたのは、持ち込んだ品物をてんぷらにあげるというもの。「何ばてんぷらにするとかい」と聞いたてんぷら屋に、材料は言わなかった清徳さん。

 翌日、清徳さんは、「ネズミ十ぴき一文で買う」と、大声でふれあるきます。直方の人は、急に増えたネズミに手を焼いていましたから、ネズミをとって清徳のもとに 持っていきました。

 清徳さんは、その日買い占めたネズミを、てんぷら屋に持ち込み、明日の朝まで 仕上げるよう頼み、翌日、そのてんぷらを さびしい山の中に 運びます。そして、誰が買うかわからないと首をかしげるてんぷら屋に、帯につけた紐を持たせ、木に登らせました。

 清徳は、「今にキツネが、てんぷらを買いにやってくる。キツネが木の葉を拾って、銭にしたら、紐をひっぱれ」と説明します。てんぷらのにおいを嗅ぎつけたキツネが、あちこちの山から谷から、木こりに化けたり、子どもに化けたりして、てんぷらを買いにきました。

 てんぷら屋は、目をさらのようにして、キツネが銭を化かして作るのを見張りました。木こりに化けたキツネがやってくると、ピョコンピョコンと、紐が引けました。

 「つまらん、つまらん。木の葉の銭じゃ、このネズミのてんぷらは、売れん。ほしかったら、ほんものの銭をもってくることじゃ。」と、次から次へとやってくるキツネを 追い払った清徳さん。キツネたちは、おいしそうなにおいのするネズミのてんぷらが、たべたくて たべたくてたまりません。それもぐずぐずしていたら、売り切れになってしまいます。そこで、町へ行って、ほんものの銭をもってきました。こうして、あくる日も、あくる日も、直方のまちに、ネズミがいなくなるまで、清徳さんは、キツネから本物の銭をもらって、大金もうけをしました。

 ただ、この銭、キツネが、馬のくそを、おいしそうなまんじゅうにして、売ったり、ミミズをうどんにばけさせて、うどん屋に売ったり、川の泥を豆腐に化けさせて、町の者に売ったもの。ネズミがいなくなる代償も 大きかった。

 

 聞いたことのない内容。まだまだ さまざまな昔話がありそうです。