福岡のむかし話/福岡県民話研究会編/日本標準/1983年
ネズミのてんぷら? これはこれは??
直方の清徳というとんちのある商人が、てんぷら屋にもちかけたのは、持ち込んだ品物をてんぷらにあげるというもの。「何ばてんぷらにするとかい」と聞いたてんぷら屋に、材料は言わなかった清徳さん。
翌日、清徳さんは、「ネズミ十ぴき一文で買う」と、大声でふれあるきます。直方の人は、急に増えたネズミに手を焼いていましたから、ネズミをとって清徳のもとに 持っていきました。
清徳さんは、その日買い占めたネズミを、てんぷら屋に持ち込み、明日の朝まで 仕上げるよう頼み、翌日、そのてんぷらを さびしい山の中に 運びます。そして、誰が買うかわからないと首をかしげるてんぷら屋に、帯につけた紐を持たせ、木に登らせました。
清徳は、「今にキツネが、てんぷらを買いにやってくる。キツネが木の葉を拾って、銭にしたら、紐をひっぱれ」と説明します。てんぷらのにおいを嗅ぎつけたキツネが、あちこちの山から谷から、木こりに化けたり、子どもに化けたりして、てんぷらを買いにきました。
てんぷら屋は、目をさらのようにして、キツネが銭を化かして作るのを見張りました。木こりに化けたキツネがやってくると、ピョコンピョコンと、紐が引けました。
「つまらん、つまらん。木の葉の銭じゃ、このネズミのてんぷらは、売れん。ほしかったら、ほんものの銭をもってくることじゃ。」と、次から次へとやってくるキツネを 追い払った清徳さん。キツネたちは、おいしそうなにおいのするネズミのてんぷらが、たべたくて たべたくてたまりません。それもぐずぐずしていたら、売り切れになってしまいます。そこで、町へ行って、ほんものの銭をもってきました。こうして、あくる日も、あくる日も、直方のまちに、ネズミがいなくなるまで、清徳さんは、キツネから本物の銭をもらって、大金もうけをしました。
ただ、この銭、キツネが、馬のくそを、おいしそうなまんじゅうにして、売ったり、ミミズをうどんにばけさせて、うどん屋に売ったり、川の泥を豆腐に化けさせて、町の者に売ったもの。ネズミがいなくなる代償も 大きかった。
聞いたことのない内容。まだまだ さまざまな昔話がありそうです。