長野のむかし話/長野県国語教育学会編/日本標準/1976年
村の衆が町へいって神明の大門とこへくると、暗闇の中から、「おばりてえなあ」て、気味が悪い声がして、みんなおっかながって、逃げかえった。
ある日、喜作おっしゃんが、神明の大門とこへくると、やっぱり、「おばりてえなあ」て、気味が悪い声がした。喜作おっしゃんは、元気なもんだから「おばりたけりゃおばれ」というと、なんだかへんなものがおぶさったから、そのままおぶって歩いてきた。そしたら、家のほうに近づくにつれて重くなった。我慢して、うんとこ家までおぶってきて、家に着いたら、「ほれ、おりろ」と、せなかからどさんとおろすと、ガチャガチャとなって、小判がおちていた。
隣の欲の深いおっしゃんが、この話きいて、神明の大門にくると、やはりと「おばりてえなあ」という声。よろこんで家まではこんでくると・・・。
欲の深いおっしゃんが、せおってきたのは泥水で、からだじゅう泥だらけになっちまった。
「おばりてえなあ」は、背中におんぶしたいということか?
正直なものには、幸運が舞い込む話。