大人と子どものための世界のむかし話6 ペルー・ボリビアのむかし話/インカにつたわる話/加藤隆浩・編訳/偕成社/1989年初版
アンコイリャス山は、ポマバンバ村に、アプチャリャス山は、そのちかくのパタス村にある山。アンコイリャス山には金や銀がたくさんうまっていて、村人は金銀をぜたくにつかい、お祭りのときは、ごちそうやお酒を飲んでは、大騒ぎ。アプチャリャス山にあるのは、石ころばかりで作物もみのらず、村人は、いつもおなかをすかせ、みじめな暮らしをしていました。
ある日、アプチャリャス山は、アンコイリャス山の財産を奪ってやろうと決心し、石ころを拾うと、つぎつぎにアンコイリャス山になげつけました。はじめは命中しなかった石ころでしたが、だんだん命中するようになるとアンコイリャス山も怒り出して、投げ返すようなりました。アプチャリャス山が投げるのは石ころ、アンコイリャス山がなげるのは金銀です。
両方の山が何日もなげあって、アプチャリャス山は、黄金が命中し、傾いて死んでしまいました。しかし気がついてみると、アンコイリャス山のあたりは、石ころばかりになり、アプチャリャス山のあたりは金や銀が山となっていました。こうしてふもとの村の人々の暮らしは逆転することになりました。
擬人化された山どうしが喧嘩するという思いもかけない展開です。カッとなって結果には思いがいたらなかったということでしょうか。ケチュア族の話です。