どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

もみの木

2019年07月30日 | 絵本(外国)

    もみの木/アンデルセン原作 石井睦美・文 瀬名恵子・絵/2019年

 

 アンデルセンとせなさんの絵というのに惹かれました。 

 せなけいこさんが、絵本作家デビュー前夜の原画を、この6月に復刻されたものです。

 石井睦美さん文となっていますが、ほぼアンデルセンの原作を踏襲していました。

 

 森の中に 小さなモミの木がいました

 早く大きくなって別の世界にいきたいと 思っていたもみの木。

 「うみで新しい船をたくさん見たよ。もみの木は、船のりっぱなマストになったんだと思う。もみの木の匂いがしたからね」とおしえてくれたのは、こうのとりでした。

 「わかいときこそ、すばらしいんだよ。ずんずんのびて、そだっているときこそ、たのしいんだよ」とお日さま。風はそっともみの木にキスをしてくれました。

 けれども、もみの木はみんなのやさしさが すこしも わかりませんでした。

 夏がすぎ、冬がきて、クリスマスがちかづくと、もみの木は切られ、ひろびろとした部屋に運び込まれました。

 召使がやってきて、もみの木に かざりつけを はじめました。くつしたの なかには お菓子がいっぱい。りんごやくるみはっまるで木になっているようです。可愛い人形も、百本もの いろとりどりのろうそくも。

 じぶんのうつくしさに、ぼうっとなるもみの木。子どもたちが、もみの木のまわりをおどりまわり、おもちゃやお菓子を持って、おじさんにお話をせがみます。

 おじさんは「ずんぐりむっくりさん」のお話をしてくれます。

 「あるところに、ころころふとって、ずんぐりむっくりさんと よばれている 男の子がいたんだよ。あるとき、ずんぐりむっくりさんは、とんとんと、階段を ころげおちてしまった。まったく ついていない。だけど、ずんぐりむっくりさん、こんどは とんとんと、えらくなって、ついにおうじょさまを およめさんにしたんだ」

 ぼくだって、そうなるかもしれないと思ったもみの木。あしたは また、きれいにかざられるのだと おもって、わくわくしました。

 しかし、次の日、もみの木は、暗い屋根裏部屋の運ばれてしまいます。何日たってもだれ一人やってきません。

 「春まで ぼくを ここにかくまっておく つもりなんだ」

 でも春がやってきて、中庭にはこびだされたもみの木は、ちいさくおられて、まきにされると、燃やされてしまいます。

 もみの木は、ネズミたちに昔の森の話をしているときに、じぶんがどんなに しあわせだったかに はじめて きづきます。 燃やされるときになって、森の夏の日や、星の輝く冬の夜や、わかかったじぶんを おもいだすもみの木の気持ちが切ない。

 木が語っていきますが、大地からきりはなされ自分ではなにもできない木。一瞬のきらめきと、そのあとのギャップは、木にとって悲しいことだけだったのでしょうか。

 この話を12月に聴いたことがあります。ツリーがでてくるのでクリスマスの時期にぴったりと思ったのですが、ラストを考えると、そのほかの時期に聴いても違和感はなさそうです。しかし、子どもはどう受けとめるでしょうか。


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