くじらのだいすけ/天野祐吉・作 梶山 俊夫・絵/福音館書店/1967年
「むかしむかし」と、昔話風ですが、クジラが山にいたころとはじまり、海で暮らすようになったという由来話でもなさそうです。
おおきなクジラが、歩くと山がゆれて、みんなに迷惑をかけるからと何十年もじっと、すわったきり。
山のお祭りの日、はっくしょんと、おおきなくしゃみをすると、やぐらも提灯も、動物たちもすっとんでしまいます。
「だいじなみんなのお祭りをだいなしにしてしまった」となげくクジラでしたが、カラスが「わざとしたんじゃない」となぐさめ、クジラがカラスと、どしんどしんと歩き出し、いったさきは海。
クジラにふきとばされた動物たちが、おこっていないぞ!とよびかけても、クジラにはよく聞こえず、おこって追いかけてきたに違いないと、クジラのだいすけは、舟で逃げ出します。しかし、その舟が小さすぎて壊れてしまい、海の底へ。
ところが海の中で、からだがかるくなり、すうーっとうかぶと、すいすい進み始めます。
ひろい海で、だれにも迷惑をかけないからと泳ぎ始めたクジラに、みんなは、いつまでも元気にくらせよとよびかけます。
みんなの気持ちはクジラにつたわったようですよ。
動物たちにとって、クジラの背中はすべり台になったり、大きな体はかくれんぼするのに格好の場所だったので、山でも人気者でしたが、やっぱりクジラは海かな!
「これからもなかよくしような」という優しい動物たち。
でもでも、誰に気兼ねすることなく暮らせるのが一番のようです。
動物たちがもつ提灯が印象にのこりました。