どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

おらびぐら・・宮崎

2024年09月23日 | 昔話(九州・沖縄)

      宮崎のむかし話/宮崎民話研究会編/日本標準/1975年

 

 むかしむかし、ずっと山おくに炭焼きの小屋があった。ある夏のはじめの夜、おやじさんは、おかみさんや子どもたちを里の家に帰し、ひとり ぐっすりねむっていた。

 すると夜中ごろ

 「ヨイ」と呼ぶ声がした。おやじさんは、はっと目を覚まし、ついうっかりして

 「オイ」と返事をしたが、耳をすましても何も聞こえない。

 だれじゃろうと考えていると、またつづいて

 「ヨイ」とよぶ声。またもや

 「オイ」と返事をしてしまった。するとまた、こだまのようなやみの声がしした。

 「ヨイ」「オイ」「ヨイ」「オイ」「ヨイ」「オイ」

 おやじさんは、はっと気がついた。

 「しまった。山んばの声くらべにひっかったか?。やりまけたら食い殺されるぞ。こら大変だ」

 「どうしようどうしよう」 いまごろ気がついても もうおそい。そのあいだも

 「ヨイ」「オイ」「ヨイ」「オイ」「ヨイ」「オイ」。 よび声がだんだん早くなる。

 おやじさんは、のどがかわき、のどがからからになった。もうだめかと思ったその時に、ひょいと、よい考えがひらめいた。

 旅の坊さんが、一夜の宿のお礼においていった琵琶だった。それを柱からおろすなり、ぎゅんと弦を張って、ピンとならした。

 「ヨイ」「ビン」「ヨイ」「ビン」「ヨイ」「ビン」

 おやじさんは、もう夢中で かきならした。何時間やったかおぼえていられない。

 と、ふっとやみの声がきえた。

 薄気味悪い静かさの中に、谷川のせせらぎが聞こえてきた。

 おやじさんは、にぎりこぶしで顔のあせをふき、琵琶をふし拝んで、ていねいに柱にかけた。

 夜、山ん中では、わけのわからないよび声には、用心がたいせつじゃということじゃ。

 

 タイトルがどこからきているかわからずじまい。声くらべする山んば!。日本の昔話には かかせない”山んば”は、まだまだありそう。


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