カンボジアの民話世界/高橋宏明・編訳/めこん/2003年初版
母親にいわれて、芋を掘りにいった少女が、森の深い穴の近くに小さな丘を見つけ ほっていると、もっていた鍬を穴の中に落としてしまいました。
女の子が「鍬の刃をとっていただければ、ご恩返しします。」と叫ぶや否や、一匹の年老いたトラがあらわれました。トラは、「わたしが鍬の刃をとってきてあげよう。でもそうしたら、私の頭にいるウジをさがしてくれないかい。私は、感謝されなくてもよいからね」と話しかけました。トラが穴の中から鍬の刃を取ってきてくれると、少女はトラの頭にいるウジをさがし、鋭い針で、トラの傷口にわいたウジをほじくりだして捨てました。
トラはなんども少女に尋ねました。「私の傷のはれは臭いかね、それともいい匂いかね?」
少女が、「とてもいい匂いよ。おじいさん」とこたえると、トラはまだ尋ねました。少女は何度でも、いい匂いだと答えました。少女が頭についていたウジをすべてとると、トラは、痛みとかゆみが止みました。トラは、籠に芋を入れ、さらに金と銀を詰め込み、家に着いたら、戸をしっかりしめて、そのあとで、籠を開けるようにいいました。
昔話のパターンで、もうひとりの少女がでかけます。この少女は、傷の腫れの匂いをとわれ、「とても臭い」といってしまいます。トラが籠にいれたのはコブラでしたから、籠を開けるとコブラが出てきて、みんなに噛みつき、全員死んでしまいました。
話はパターン化されていますから、ふたりめの少女が出てきたところで、結末が予想できます。ただ、二人目の少女のいう、「傷の腫れは臭い」というのが 本心で当然なのですが・・・。