やぎのしずかの たいへんなたいへんな いちにち/偕成社/2011年
やぎのしずかが、ふたごのあかちゃんにミルクを飲ませるために パクパク ムシャムシャ ゴクン パクパク ムシャムシャ ゴクン と夢中になって草を食べていると、葉っぱの上で、ひるねをしていたバッタの 足をかんでしまいました。これが一日の大変な騒動のはじまり。
ごめんなさいをいう間もなくバッタはしずかのかおにしがみついて、目も鼻もふさいでしまいました。
きゅうにはしりだしたしずかは、こんどはひるねしていたアマガエルをふんずけて、おっぱいに はりつかれてしまいます。
ふりおとそうと すごいいきおいではしりだしたしずかは、ナマズにヒゲにぶらさがれ、コジュケイたちに どなられて どこまでもどこまでも はしりました。
とうとう しずかは土手のキャベツ畑の大きなキャベツに 頭をつっこんでしまいました。
「これはきのどく きのどく」と、みんなでキャベツを かじったり、ひっぱがしたり、つっついたり。しずかも内側からムシャムシャ、キャベツを食べて、バッタのタクトで<よかったね よかったね>を 歌いました。
いつもながら躍動感のある田島さんの絵ですが、しずかが キャベツに頭を突っ込んだときの大変なようすにビックリ。
ふたごのあかちゃんやぎが 小屋でミルクをのんでいる様子は、しずかにゆったりです。
表紙の見返しのコジュケイ親子の散歩も楽しそうです。
ところで崖の上のポニョは大変な2か月半だったのか、それとも自由な日々のどちらだったでしょうか。
やぎのしずかの しんみりした いちにち/偕成社/2015年
やぎのしずかが、川の岸辺に水を飲みにいくと ともだちのナマズだでてきて<しんみりするうた>を歌ってくれます。
ナマズの歌が、なにを 歌っているかよくわからないしずかでしたが、草を食べながら「しんみりするって どんなことだろう?」と考えます。
セミが きゅうに 歌うのをやめると 木から落ちて動かなくなりました。すぐにアリたちがやってきて、アリがやってきてセミを運んでいきます。
しずかがあとについて しげみに頭をつっこむと、そこには、きれいな朝露が綺麗な玉になってクモの巣の上にならんでいました。
しずかが「あなたたちは、こんなにきれいなのに、どうして だれにも気づかれないでキラキラしているの?」と聞くと、朝露は黙ってキラキラするだけ。
「ねえ、あさつゆたちが キラキラしているのを みた?」「ねえ、セミは死んだら、もううたわないの?」と、しずかがきいても、ガマガエルやコジュケイは、こたえてくれません。
しずかは、やわらかな はなびらが蕾から はみだしているのをみて、 おもわず ぱくりと食べてしまいました。
それをみていたバッタから「やーい、やい。しずかが たべちゃった! きれいな はなの つぼみを たべちゃった!」と、はやしたてられ、しずかは、咲くことができなかった花のことを 思いました。
セミのこと、朝露のことを考えながら眠ってしまったしずかでしたが、目を覚ますと、何を考えていたのか思い出せませんでした。
ガマガエルとコジュケイたちもやってきて、バッタがタクトをふって、みんなで<げんきに なるかも>という歌を歌うと、調子はずれの、元気な歌が、風に乗って 遠くまで流れていきました。
セミの死や、誰にも知られずキラキラ輝いている朝露にであって、しみじみと泣いた しずかもまた、花の命を摘むようなことをしてしまったことを指摘されました。
一時落ち込んだしずかですが、仲間が<げんきに なるかも>という歌で、はげましてくれました。
つい先日、クモが網を張って、セミが絡まっていました。夜八時ごろでしたが、朝見ると地面に落下していて、今度はアリの大群が群がっているのをみたばかりですから、妙にリアルでした。セミは、5年も地中で過ごし、地上にあらわれても本当に短い命。クモにやられるというのも自然の営みです。