三人兄弟/子どもに語るアジアの昔話Ⅰ/松岡享子・訳/こぐま社/1997年初版
三人の兄弟がでてくる話には二つのパターンがあって、その一つは上のほうから順番に出かけていって、末っ子がうまく問題?を解決するというもの。上の二人に比べてぱっとしない末っ子が活躍するのがみそ。
もう一つは、三人が同時に旅に出て、三つに分かれた道で各々が別れ、旅をするもの。
後者は兄弟間の優劣はあまりでてこなくて、一旦別れた兄弟が再開し、三人が協力して何かを成し遂げる。
個人的には兄弟が協力するという話のほうに魅かれる。
そして面白いのは、三人姉妹がでてくる話では、姉妹が協力してことにあたるという話に出会ったことがないということ。この違いはどこからくるのか?
フィリピンの「三人兄弟」というのは、教訓を含んだ後者の話。
百姓仕事より、いっぺんに大もうけしたい思っていた三人兄弟が、母親から「自分の運をさがしておいで」といわれ旅にでます。三人は7年目におなじ場所で落ち合うことにします。
一番上は、ガラス工場で働いて立派なガラスづくりのわざを身につけ、2番目は腕の良い船大工になりますが、末っ子は泥棒の名人になります。
三人兄弟が家に帰ってから、美しい王女が魔法使いにさらわれ、無事に王女を連れ戻した者は、王女と結婚し王子の位もあたえられるというおふれがだされます。
三人はおのおのが身につけた技をつかって王女を助け出すことに成功します。
三人兄弟の誰が王女と結婚するのか結末が気になるところですが、結婚のかわりに、国の半分の土地をもらい、それを三人で平等にわけることになります。
この手の話で泥棒の名人になるというのが日本の昔話にもあって、泥棒もかかせない役割をもっているのが楽しい。