どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

なんでも だっこ!

2021年12月02日 | 絵本(外国)

    なんでも だっこ!/スコット・キャンベル・作 せなあいこ・訳/評論社/2016年初版

 

しゃきーん! やってきたのは むてきの だっこロボ。

お母さん、お父さん、おねえちゃん

おまわりさん おばあちゃん ベンチだって、ポストだって みんな だっこ。

もちろん あかちゃんも。

だっこロボの エネルギーは ピザ。

だっこをしまくり さすがの だっこロボ へとへと。

すると お母さんが・・・。

 

ガードをかためてだっこするハリネズミ クジラは 背中を だっこしながら すべる場面で、大笑い。そして、イヌとカメがハグする裏表紙にほっこり。だっこリストも あります。

嫌いな人はいないだっこ。でも、コロナで ハグも だっこも ままならないかな~。


2021年12月01日 | 絵本(日本)

      秋/かこ さとし/講談社/2021年

 

 加古さんが亡くなられたのは2018年5月2日ですが、この絵本が出版されたのは今年の7月。
最初の原稿は1953年に書かれていますが、出版までの経緯については、加古総合研究所の鈴木万里さん(加古さん長女)のあとがきがあります。

 おいしい果物がどっさりなる秋が大好きだったという私。”私”とあって、当時の体験がもとになっているようです。

 トウモロコシの葉が風にゆられ、ヒガンバナの行列。白い風に赤トンボがかさかさ音をたてて、野原にはノギクやアカマンマやらが咲き乱れる秋。

 「戦争がおわって、戦争のない秋の美しさが続きました。」と結ぶ最後には、秋桜が咲いています。

 児童の疎開、勤労動員で勉強もままなくなり、物資の不足、食料が困窮した1944年の秋。

 学徒勤労動員で働いていた工場で盲腸炎になり、工場付属の病院で手術をします。傷口がおちつくまでなにも食べたり飲んだりせずに、じっと寝ていなくてはなりません。身のまわりを世話をしてくれたのは関西弁で話すこわいおばさん。のどがカラカラで水をたのむと、オナラがでるまではあかんと、にらまれてしまいます。ようやくオナラがでた翌日、盲腸炎の手術をしてくれた先生に召集令状がきました。

 病院の地下壕で、敵の爆撃機に近づいて墜落した戦闘機の飛行士が、落下傘がひらかず地面に落下する光景を目撃。

 手術してくれた先生の戦死、病院で世話してくれたおばさんの息子さんの死が続きます。

 戦争はどうして、こんな人たちを 元気で、明るくて、いい人たちを、次々殺していくのだろう。

 どんな苦しみだって、戦争の苦しさにくらべたら 耐えられるだろうに。

 青い空や澄んだ秋晴れは、戦争のためにあるんじゃないんだ。空襲や戦争のために、青く澄んでいるなら、こんな秋なんかないほうがいいんだ。

 加古さんの強い憤りです。

 

 「戦争がおわって、戦争のない秋の美しさが続く」光景をいつまで続けられるでしょうか。

 「子どもたちへ、今こそ伝える戦争ー子どもの本の作家たち19人の真実ー講談社2015年」に加古さんも自身の体験を書かれていますが、この絵本に出てこないエピソードもありました。