公務災害、二審で逆転認定 岩手に震災派遣、脳疾患死
2017年12月27日 (水)配信共同通信社
東日本大震災で被災地に派遣された大阪府職員の男性=当時(49)=が脳血管疾患で死亡したのは業務が原因だとして、公務外と認定した地方公務員災害補償基金に処分の取り消しを50代の妻が求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は26日、原告側敗訴の一審大阪地裁判決を取り消し、請求を認めた。
田中俊次(たなか・しゅんじ)裁判長は被災地の過酷な状況で強い精神的ストレスがあったと判断、死亡との因果関係を認めた。代理人の北本修二(きたもと・しゅうじ)弁護士は「裁判所が災害派遣に伴うストレスを認定した意義は大きい。今後の被災地支援で職員が安心して働ける一助になる」と評価した。
判決によると、男性は府の保健所で勤務。2011年の4月と5月、地震と津波で市街地の多くが壊滅した岩手県宮古市などに派遣され、公衆衛生チームの運転手として避難所を巡回した。5月の派遣中に頭痛を訴え、救急搬送されたが、くも膜下出血で死亡した。
判決は、余震による津波の危険が続く中、信号機や街灯が失われてがれきの残る道路の走行で「強い精神的緊張を強いられたことが容易に推認できる」と指摘。過酷な宿泊環境や悲惨な現場を目にしたストレスが顕著な血圧上昇につながったと認定した。
基金側が「発症当日の運転業務は約3時間で、過重な職務といえない」と主張した点は「時間のみで判断するのは相当ではない」と退けた。
妻は公務災害の認定を求めたが、12年8月に公務外の死亡とされた。その後の再審査請求でも認められず、14年11月に提訴。今年2月の一審判決は運転時間などを重視し、訴えを退けていた。妻は判決後に大阪市内で記者会見し、「夫の自己責任と決めつけられて悔しい思いもしたが、大変うれしい」と話した。