難病HAM発症遺伝子を特定 京都大などグループ 早期発見、治療に期待
京都大などの研究グループは8日、HTLV―1ウイルスが原因で歩行障害が進む難病HAMの発症に関わる遺伝子を特定したと発表した。発症リスクの高い遺伝子を持つ保菌者(キャリアー)が分かれば、早期発見、早期治療が期待できる。
HTLV―1キャリアーは鹿児島など九州に多く、全国に108万人と推計される。キャリアーの0.3%が脊髄に炎症が起こるHAMを発症する。
HAMは発症初期に治療やリハビリをすれば進行を緩やかにする効果が高い半面、症状に気付きにくく診断までに時間がかかることが多い。進行すると治療が難しく、やがては歩行できなくなる。
研究グループは、聖マリアンナ医科大の山野嘉久教授(鹿児島大出身、脳神経内科)が蓄積した患者とキャリアーのデータベースや鹿児島大などの協力を得て約3400人分の血液を収集。このうち約1700人分を京都大学ゲノム医学センターの松田文彦センター長(ゲノム医学)がゲノム解析した。
その結果、免疫反応に関わるHLA領域の複数の遺伝子が発症と強く関連しており、これらの遺伝子のタンパク質に含まれる特定の場所にあるアミノ酸が関わっていることが判明した。
さらに患者とキャリアー約2600人分のデータを比較して発症リスクを推定したところ、発症に関わるアミノ酸の組み合わせを持つ人は最大9.6倍のリスクがあった。この組み合わせのアミノ酸がある人は、白血球中のウイルス量の増加によって発症リスクが飛躍的に上昇することも分かった。
山野教授は「リスクの高い遺伝子が分かったことで早期発見に加え、遺伝子の特徴に合わせた個別の治療の開発につながる可能性もある」と話している。